2019 Fiscal Year Annual Research Report
非対称な細胞膜への金属錯体の化学修飾と反応制御
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04599
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
越山 友美 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30467279)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 細胞膜 / 細胞骨格蛋白質 / 金属錯体 / 配位化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工膜であるリポソームは、比較的取り扱いが容易であることから、金属錯体との融合が進められてきた。しかし、リポソームは対称膜であるため、外表面と内表面の両方に金属錯体が配向し、また、錯体間の相対配置が定まらないため、錯体の反応効率の低下を引き起こす。そこで本研究では、「非対称膜」である細胞膜に着目した。細胞膜の内部表面には細胞骨格蛋白質が存在し、膜の内外で異なる構造を有する。そのため、細胞膜を足場として金属錯体を異方的に固定化できれば、膜上での金属錯体の配向と相対配置の制御により、精密な錯体の反応制御ができると考えた。本年度は、本手法の妥当性を検証するため、細胞骨格蛋白質への金属錯体などの機能性分子の修飾と反応評価に取り組んだ。細胞骨格蛋白質へ異なる2種類の機能性分子を修飾する手法を確立し、光誘起エネルギー移動反応など光反応場として細胞膜が有用であることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる2種類の機能性分子を細胞骨格蛋白質へ修飾する手法を確立し、光反応評価を実施した。発光性金属錯体の修飾による光誘起エネルギー移動反応では、エネルギー受容体であるRu(bpy)3錯体を細胞骨格蛋白質のリシン残基に、エネルギー供与体である蛍光分子(フルオレセイン、およびピレン)をシステイン残基に修飾した細胞膜の作製に成功した。蛍光スペクトル測定より、エネルギー供与体/受容体間でのエネルギー移動を確認し、また蛍光分子の修飾率を変化させることでエネルギー移動効率が変化することを明らかとした。また、異種金属錯体の修飾による二酸化炭素の光還元反応では、可視光で励起可能な光増感剤である [Ru(bpy)3]2+錯体、および二酸化炭素を一酸化炭素やギ酸に還元する [Re(bpy)(CO)3Cl] 錯体を細胞骨格蛋白質への修飾を達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度に引き続き、(1)細胞膜を反応場とした発光性金属錯体の修飾による光誘起エネルギー移動反応と、(2)異種金属錯体の修飾による二酸化炭素の光還元反応を推進する。(1)については、共焦点顕微鏡観察や各種分光学的手法により、より詳細なエネルギー移動過程の解明を進める。また、細胞膜の変形に伴うエネルギー移動効率の制御にも取り組む。(2)については、室温、水中、可視光照射下での二酸化炭素の光還元反応の評価を行う。光還元反応の活性向上において[Ru(bpy)3]2+錯体と[Re(bpy)(CO)3Cl] 錯体での電子授受が重要であるため、修飾条件により各錯体の修飾率を変化させ、錯体間の距離、および比率を調整し、反応の最適化を行うとともに、各種分光学的手法により反応機構解明を進める。
|