2019 Fiscal Year Annual Research Report
多核金属錯体への高次非対称性の導入による電子・プロトン移動能の精密制御
Publicly Offered Research
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
19H04602
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 美欧 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20619168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 錯体化学 / 多核金属錯体 / 電子移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
多核金属錯体はその魅力的な構造に加え特徴的な酸化還元特性や磁気的特性・光化学的特性・反応性をもつために人工系・天然を問わず重要な役割を果たしている。多核金属錯体の特に重要な特徴として、電子移動反応により様々な電子状態を取ることができる点が挙げられる。したがって、多核金属錯体の電子移動反応を制御することができれば様々な機能性物質の開発に繋がると期待できる。但し、多核金属錯体においては、複数の電子移動過程が考えられるために酸化還元挙動は非常に複雑になる。そこで本研究では、多核金属錯体に異種金属イオンを戦略的に導入し、その電子移動制御を行うことを目的とした。 非対称な金属イオン配置を有する異種金属5核錯体の合成は、段階的錯形成法によって行った。まず、配位子であるHbpp (3,5-bis(2-pyridyl)pyrazole)とルテニウムイオンを反応させることで、単核錯体[Ru(Hbpp)3]2+を得た。この単核錯体に対し、比較的置換活性な種々の第一遷移金属イオン(M)と反応させ一連の異種金属5核錯体群を合成した。錯体はESI-TOF-MS、元素分析、単結晶X線構造解析によって同定した。また、同様の骨格を持つ同種金属5核錯体の合成についても行った。 さらに、得られた金属錯体についてその電子移動能を評価したところ、ルテニウムイオンと鉄イオンを有する異種金属5核錯体、ならびにルテニウムイオンとマンガンイオンを有する異種金属5核錯体において特異な電子移動能が発現することが明らかになった。これらの金属錯体では、2電子酸化と1電子還元が同時に進行する過程(酸化時還元)が進行し、この挙動は同種金属5核錯体とは大きく異なるものであった。これらのことより、5核金属錯体中の金属イオン配置を非対称化することでその電子移動特性を制御可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究においては、金属イオン配置の非対称化による電子移動能の精密制御に関する研究を実施することを目標としていた。この目標に対し、異種金属5核錯体の電子移動反応について各種分光測定を用いて詳細な調査を行い、金属イオン配置の非対称化が電子移動能に与える影響について評価することができた。更に、静電ポテンシャルを考慮して各酸化状態のエネルギーについて概算し、電子移動能が変化する理由についても具体的に考察した。加えて、いくつかの既知化合物との比較を行い、金属イオンの種類が電子移動能に与える影響についても合理的な説明を加えることができた。 以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果を受け、2020年度の研究においてはまず、金属イオン配置の非対称化が電子移動能に与える影響についてより詳細に検討してく予定である。加えて、5金属錯体中に高次非対称性を導入する手法を確立することを中心に研究を遂行する。そのために、金属5核錯体を構成する3つの要素、金属イオン・有機配位子・架橋配位子それぞれの要素を非対称化し、これらを統合することで高次非対称型金属5核錯体を開発する。特に、錯体内部に存在する架橋酸素原子を起点とした非対称性の発現について検討を行う。そして、これらの高次非対称化に伴う新規機能の開拓についても検討する予定である。
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Research Products
(8 results)