2019 Fiscal Year Annual Research Report
湯川結合とコンパクト空間
Publicly Offered Research
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
19H04605
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 達夫 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60322153)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超弦理論 / フレーバー構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コンパクト空間上の超弦理論から導かれる素粒子の様々な性質の解明、特にクォーク・レプトンの質量の階層構造や混合角、CP位相などのフレーバー構造の起源についての研究である。 本年度は、トーラスやオービフォルド空間がもつ幾何学的対称性であるモジュラー対称性の4次元低エネルギー有効理論についての意味の研究を集中的に行った。超弦理論サイドからのそのモジュラー対称性の研究を行い、クォーク・レプトンの世代に対応する縮退したゼロモードがモジュラー変換のもとで、どのように互いに移り変わるかを具体的に示し、モジュラー変換が、世代間を互いに入れ替えるフレーバー対称性であることを示した。 一方で、そのようなモジュラー対称性やその部分群を4次元の有効場の理論に課した際に、クォーク・レプトンの質量行列はどのようなパターンとなるのか調べた。さらにそのような有効場の理論の枠組みにおいて、クォーク・レプトンの質量や混合角、CP位相などの実験値を再現することが可能であることを示した。そのような場の理論の研究においては、大統一理論への拡張も試みている。また、このようなシナリオ全体において、コンパクト空間の幾何学邸に性質を決定するモジュライの値をいかに決定するかが重要である。そのモジュライの値の決定機構についての研究も行った。それに加え、CP対称性の自発的破れの可能性を研究したが、モジュラー不変な有効場の理論においては、CP対称性の自発的破れを引き起こすことは困難であることを示した。CP対称性の自発的破れは今後の研究課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述のモジュラー対称性の研究において、超弦理論の研究やモジュラー対称性をもつ4次元有効理論のフレーバー構造の性質について、様々な視点から研究することができた。特に、あるクラスの超弦理論において、そのアノマリーの構造について、普遍的な構造を示すことができた。さらには、そのアノマリーの構造を生かし、4次元有効場の理論で起こりえる様々な可能性を提案し、その素粒子物理学的意味は明確にすることができた。また、モジュラー対称性とCP対称性の関係を追求し、モジュラー対称性をもつ、4次元有効場の理論の枠組みでCP対称性の自発的破れの可能性について、研究し、その研究を通して、コンパクト空間の幾何学対称性と4次元場の理論のCP対称性についてのまったく新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、コンパクト空間の幾何学対称性と4次元場の理論のCP対称性についての新しい知見を得た。その対称性がCP対称性の起源となっているということである。これを踏まえて、4次元の有効場の理論におけるCP対称性の自発的破れの可能性の研究を行ったが、その模型の枠内ではCP対称性の自発的破れを実現することはできなかった。今後は、様々なコンパクト空間、モジュライの決定機構において、CP対称性の自発的破れの可能性について、研究を行う。さらに、その自発的対称性の破れが実現できれば、その素粒子物理学的に意味について、様々な視点から研究に取り組む。
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