2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sub-GeV darkmatter search using superconducting detector
Publicly Offered Research
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
19H04608
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木内 健司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00791071)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導検出器 / MKIDs / 単一光子検出 / GaAs / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
6インチシリコン基板を用いた超伝導力学的インダクタンス検出器 Microwave Kinetic Inductance Detectors (MKIDs) を設計、作製した。 超伝導体としてアルミニウムを用いた。超伝導バンドギャップはおおよそ0.33 meVと極めて小さく、本研究のターゲットである900 nm(1.4 eV)の光子を単一光子検出が可能である。作製した素子の特性を希釈冷凍機を用いた冷却測定系で評価した。予定した電気的特性を示すことが確認でき、高い歩留まりが得られた。また、信号に対する応答を調べるため、動作温度を50 mK から500 mKまでの温度域で変化させ、予定通りの応答性を得られた。これらの結果はまとめて低温検出器学会 Low Temperature Detector 18にて報告した。 設計においては、電磁界シミュレーションソフトウェア SONNET EMを用いて最適化を行った。KIDsは検出器に相当する超伝導の高周波共振器と、超伝導の高周波読み出し線が容量結合された構造となっている。このとき、容量結合の強度は特に実際の運転環境に合わせた最適化が必要不可欠である。そのため結合強度と構造の関係を明らかにし、最適化を行った。また、同様にシミュレーションにて共振器間のクロストーク対策構造の評価を行い、予定通りの効果があることを確認した。 2020年度はこれらのシミュレーション結果を反映したKIDsを作製するとともに、異なる超伝導体を組み合わせた高感度なハイブリッド型KIDsを作製する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3インチGaAs基板を用いてKIDsを作製し、希釈冷凍機にて評価を行ったが、予定していた電気的特性を得られなかった。これは基盤表面に高周波を減衰させる物質が形成されているか、作製上の問題である可能性が高い。このため、原因究明と並行してサファイア基板を用いた作製への移行を検討している。 また、2020年度の試作では感度向上のため超伝導転移温度がTc = 9Kと比較的高いニオブと、超伝導転移温度がTc = 1.2Kとニオブに比べて低いアルミニウムを組み合わせる予定である。このとき、検出器として動作する超伝導共振器の特性はニオブの特性が支配的になる。そのため特性の良い超伝導ニオブ薄膜を用いることが感度向上にとって必要不可欠である。当初は独自に成膜を試みる予定であったが、アメリカで超伝導素子SQUIDの作製にて実績と経験が豊富なSeeQC社との契約を結ぶことで高品質なニオブ薄膜を安定的に供給できる体制を整えた。一方で、この契約の詳細を決定するために時間を要した。また、この際にSeeQC社にてKIDsの作製まで行うことを検討したが、安全輸出規定に抵触する可能性が判明したためその確認に時間を有した。結果としては超伝導薄膜のみを輸入する形を取ることにしたため、この問題は発生しない。高品質なニオブ薄膜を入手するために、若干の遅れが生じているがこれは一時的なものでありすでに解決済みである。安定した超伝導ニオブ薄膜が供給されるため、今後の開発はスピードアップすることが見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、計画通り超伝導検出器KIDsを用いた単一光子検出器の開発を行う。本年度は昨年度作製したアルミニウム単層のKIDsから発展させ、ニオブとアルミを組み合わせたハイブリッド構造のKIDsを作製することで、予定の性能が得られるか検証を行う。すでにSeeQC社より高品質なニオブ、アルミの2層薄膜を成膜したウエハを購入済である。2019年度に検証した設計に則ってフォトマスクを作製し加工を行う。 新しく作製したKIDsの検証のため、低温動作するLEDを用いた光学評価系を作製する。このLEDは3Kまでの動作が報告されている。KIDsは高感度な一方、ライトリークに敏感で余計な光による負荷によって感度が落ちてしまう。LEDを用いた光学評価系ではクライオスタットに穴を開けなくて良いため、ライトリークを防ぐことができる。正確な性能評価に有用である。実際の観測においても窓は不要なため、実際の運転環境と同等の環境で評価することができる。 また、KIDsを作製する基盤として、サファイアの導入を検討する。サファイアの屈折率は900 nm付近で約1.75とGaAsに比べて高い値を示す。これを積極的に活用してロスなくKIDsに光子を導入できないか検討中である。 シンチレータとして用いるGaAsは、同様にLED光源を用いた発光量試験を行ったのち、KIDsと組み合わせ検出試験を行う。
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