2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the Early Universe with the Standard Model of Particle Physics
Publicly Offered Research
Project Area | New expansion of particle physics of post-Higgs era by LHC revealing the vacuum and space-time structure |
Project/Area Number |
19H04610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎌田 耕平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60835362)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフレーション / ヒッグス場 / 宇宙磁場 / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は研究計画のうちHiggs-$R^2$模型の再加熱問題に取り組んだ。特に2019年4月に発表されたF. Bezrukov et al. arXiv:1904.04737 において指摘された、これまで気づかれていなかった、この模型に内在する新たな再加熱機構は、この模型の本質を迫る上で最重要課題であると捉え、これの理解に取り組んだ。この先行研究においては、インフレーション終了後のスカラー場のダイナミクスがある条件を満たせば、宇宙の再加熱が非常に速やかに進むことが指摘された。スカラー場のダイナミクスは模型パラメータによって決められることはすでに我々の研究で明らかになっていたが、この新たな再加熱機構はその模型パラメータに基づいたシステマティックな理解にはいたっていなかった。そこで、この新たな再加熱機構は模型パラメータにどのような条件が満たされれば起こるのかを系統的に調べ、模型パラメータにどのような微調整が必要であるかを明らかにした。特に、先行研究ではヒッグスインフレーションに近い模型パラメータでこの再加熱機構が起こりうることが示されていたが、$R^2$ インフレーションに近い模型パラメータでも起こりうることがわかり、模型パラメータ空間すべてにおける振る舞いが明らかになった。この成果は現在論文にまとめており、2020年6月中には学術論文誌に投稿する予定である。 また、初期宇宙において強い磁場があった場合にそれによって重力波が生成される現象とその帰結を調べた。この研究の結果、この機構によって生成された重力波が現在の宇宙にGHzの周波数を持った背景重力波として存在することがわかり、GHzの周波数帯の重力波望遠鏡を検討する強い動機を与えた。この成果は2020年2月にプレプリントサーバarXivに投稿すると同時にPhysical Review D誌に投稿し、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年4月に発表されたBezrukov et al. は我々が気付いていなかった新たな現象を指摘したが、もし本当であればHiggs-$R^2$模型を考える上で非常に重要なものであるということは明らかであった。一方で、この論文は主に数値的な結果を与えており、解析的な定性的、定量的な説明は充分にはなされておらず、まずはこの現象の定性的定量的な理解を得ることを最優先課題として研究を進めた。特にこの現象を起こすためには模型パラメータに強い微調整が必要であるというのが直感的な期待であったが、先行論文においては比較的緩い微調整でこの現象が起きうるという状況証拠が示されており、より深い理解が不可欠であった。解析には比較的時間がかかったが、最終的には満足のいく理解が得られ、その成果を現在論文にまとめているところである。 また、研究テーマの性格から、素粒子標準模型と一般相対論の初期宇宙における帰結を、当初提案した計画にこだわらずに調べることは重要であると考え、素粒子標準模型に存在する磁場と一般相対論に存在する重力波の相互作用の帰結を調べることを優先した。ここで磁場を媒介して初期宇宙に存在する光子が重力波に変換されることが示されたが、これは素粒子標準模型および一般相対論を超えた物理を仮定することなく不可避的に起こる現象であり、この重力波背景放射の観測は素粒子標準模型と一般相対論の検証のために重要な予言であったと確信している。 当初予定していた一般化ヒッグスインフレーションの研究も順次進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Higgs-$R^2$模型の再加熱機構は、F. Bezrukov et al. で予言された現象をもとにさらに研究を進めていく必要がある。ここで予言された現象がインフレーション終了直後に起こるための模型パラメータに課される条件は明らかになったが、この現象はインフレーション終了後しばらく経って後に起こる可能性も存在する。そこでまずはどのような条件のもとで、この現象が起こるかをより包括的に調べる予定である。 加速器実験からこの模型に関する情報を得るためには、標準模型のパラメータの繰り込み群方程式によるrunningを調べなければならない。このためには非自明な重力結合を含んだ繰り込み群方程式の適切な定式化が必要である。2020年2月に発表されたEma et al. arXiv:2002.11739はこの問題を解きやすいframeを提供しており、これに基づいて研究を進めていこうと考えている。 一般化ヒッグスインフレーションに関しては提案した通り、まずはH^\dagger D^2 H |D_\mu H|^2 + h.c. を健全なものにするための補正項を調べ、その観測的な帰結を調べることから始める。この研究が速やかに進んだ場合は、Horndeski理論に基づいたより一般のヒッグスインフレーションの健全性への考察を進める予定である。
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