2019 Fiscal Year Annual Research Report
微動カタログ・GNSSデータ・地質調査に基づく西南日本のスロー地震発生場の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Science of slow earthquakes |
Project/Area Number |
19H04620
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 将行 東北大学, 理学研究科, 助教 (10739056)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スロースリップイベント / 低周波地震 / GNSS / 傾斜計 / 西南日本 / スロー地震 / 石英脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、低周波地震の発生数を基準として、西南日本で発生する短期的スロースリップイベント(SSE)に伴う微小な地殻変動をGNSSデータから抽出することに成功した。四国西部においては、従来知られていた深さ35 km程度におけるSSE発生時に、地震発生帯下部に位置する深さ20 km程度のプレート境界でもゆっくりとしたすべりが同期して発生していることが分かった[Kano et al., 2019]。このSSEの同じ発生は流体のプレート境界に沿った移動により解釈できる可能性がある。 また、巨大地震の地震間においてSSEの発生間隔が変化することが知られている。紀伊半島で1970年代に得られた傾斜記録の解析により、この時代のSSEが2000年以降に発生しているSSEよりも大きく、また発生間隔が長かった可能性を示した[Kano and Kano, 2019]。数値シミュレーションによると、巨大地震の発生が近づくにつれて、SSEの発生間隔は短く、また規模が小さくなることが示されており、Kano and Kano [2019]で示唆された観測事実と定性的に一致している。 宮崎県延岡市の海岸沿いに露出する岩石には、地震発生帯下部における高流体圧下での脆性破壊が石英脈として記録されている。脆性破壊時に生じた亀裂が石英の沈殿によって閉鎖する時間を計算することで、脆性破壊の発生間隔を見積もった。その結果、脆性破壊の発生間隔は、時間の経過とともに減少、もしくは増加することが見出された。このような脆性破壊の発生間隔の減少は、測地学的研究[例えばKano and Kano 2019]や数値シミュレーションで示されている巨大地震間におけるスロー地震発生間隔の減少と関連している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地殻変動データの解析を通して、規模の小さなSSEが地震発生域の下限でも発生していること、また巨大地震発生後のSSEが現在起きているものに比べて規模が大きかった可能性、が示唆された。また、地質調査・試料解析によって、スロー地震発生深度における脆性破壊の発生間隔は時間の経過とともに短くなり、巨大地震が近づくにつれてスロー地震発生間隔が短くなる可能性が地質学的に示唆された。これらの巨大地震とSSEの時空間的な関連性は、スロー地震を含む地震発生サイクルを考える上で重要な知見である。 以上の理由からおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は解析領域を西南日本全体に拡張し、SSEの空間分布と巨大地震発生域との関連性を調べる。また、宮崎県延岡市・長崎県長崎市の地質調査・試料解析によって、地震発生域下限(深度10-15 km)から短期SSE発生域(深度~30 km)で変形した岩石の歪速度を調べる。得られた結果を基に、測地学的研究から見積もられた長期的・短期的SSEの歪速度との比較を行う。
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