2019 Fiscal Year Annual Research Report
Numerically robust data assimilation of long-term SSEs considering heterogeneous elastic structure
Publicly Offered Research
Project Area | Science of slow earthquakes |
Project/Area Number |
19H04631
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
縣 亮一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 研究員 (80793679)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スロースリップイベント / モデル予測誤差 / ベイズ推定 / すべり分布推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
スロースリップイベント(SSE) の発生様式の説明と発展予測を行うために、測地観測データと数値シミュレーションを組み合わせたデータ同化を用いることが考えられる。すべり発展のデータ同化はすべり逆解析と密接に関わる。当該年度は、仮定したフォワードモデルによる予測に伴う誤差(モデル予測誤差)による影響をすべり分布推定に取り込む手法を構築した。具体的には、陸・海域の測地データ双方を用いる場合など、空間的配置のばらつきが大きい観測データを用いたすべり分布推定において、地下構造の不確かさや仮定した物理モデルの不完全さなどによるモデル予測誤差が推定結果に与える影響を軽減する手法を提案した。提案手法のコアとなるのは、観測データの誤差がガウス分布の従う性質を持つと仮定し、普段は無視される(つまり0とされる)ことの多いデータ誤差の共分散成分を、モデル予測誤差に由来するものとして導入したことである。この共分散成分は、データと推定パラメータである断層面でのすべり量を結びつけるグリーン関数に基づいて計算される。共分散成分を考慮することで、空間的偏りのあるデータに対する重みづけが適切に行われるため、その偏りがすべり推定結果に与える悪影響を排除しやすくなる。SSEのすべり分布への適用に先立ち、陸・海域双方の測地データを用いた解析が盛んにおこなわれている南海トラフ域の地震間断層固着度分布推定に提案手法を適用したところ、測地データの観測点配置に対してロバストな推定が可能となることが確認できた。本内容についてGeophysical Journal International誌で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、モデル予測誤差に由来するデータ誤差の共分散成分をすべり分布推定に取り入れる手法を開発した。南海トラフ域の地震間断層固着度分布推定において有用性を確認できた一方、モデル予測誤差のどの成分がデータ誤差に対して影響するか、観測データの取得を通じてモデル予測誤差がどの程度軽減されるかなどの詳細な情報を得ることができないことが課題として残った。当該年度の検討をベースにして、これらの課題を解決した手法構築を行う必要がある。次項で述べる通り、すでに改善の方針は立っており、解析も進めているところである。当初は手法構築を初年度で終了させる予定だったため、(3)やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の検討をさらに発展させ、SSEなどのすべり分布推定の際に前もって仮定する必要のある地下構造の不確かさに伴うモデル予測誤差に着目したすべり分布推定手法の構築を行う。本手法は、「不確かな地下構造」を丸ごと多数の地下構造モデルからなるアンサンブルにより表現することで、「一つの地下構造モデル」を仮定することによるモデル予測誤差の影響を軽減した手法である。さらに、すべり分布推定を通じてアンサンブルのメンバー一つ一つの観測データに対する当てはまりの情報を得られることから、ポスト処理として地下構造のパラメータの推定も行うことができ、解析を通じたモデル予測誤差が軽減できると期待される。数値実験により有効性を確かめたのち、豊後水道の2010年L-SSEのすべり分布推定を行い、その適用性を確かめる予定である。すべり分布推定においては通常、各誤差要因に基づく推定の不安定性を軽減するために経験的な拘束をすべり分布パラメータに与えることが多い。提案手法においては、10^3のオーダーのメンバーからなる、プレート形状モデルと半無限均質媒質の弾性パラメータにより構成される地下構造モデルのアンサンブルを考慮することで、「一つの地下構造モデル」の仮定に伴う誤差要因を低減し、そのような拘束を導入せずにすべり分布推定が行えるものと期待される。経験的な拘束を排除することで、得られるすべり分布と周辺領域の他のスロー地震活動の整合性がどう変化するかを調べる予定である。
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