2019 Fiscal Year Annual Research Report
Redesign of biosynthetic machinery for prenylated polyphenols via integration of metabolic and transport engineering
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of Complex Functional Molecules by Rational Redesign of Biosynthetic Machineries |
Project/Area Number |
19H04654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢崎 一史 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (00191099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 合成生物学 / メロテルペン / プレニル基転移酵素 / フェニルプロパノイド / 輸送工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物のプレニル化フェノール類は、抗腫瘍、抗酸化、抗菌活性、脂肪燃焼促進作用など多様な生理活性を持ち、機能性食品や医薬品原料等として極めて有望である。一方、天然における含量は一般に低く、単離もコスト高となることから、高効率の生産系の確率は基礎研究分野のみならず、産業界においても高いニーズがある。 本研究では、植物由来のユニークなジプレニル化酵素AcPT1と、PAL/C4H/4CLの3遺伝子を用いた基質のp-クマル酸の細胞内供給を行う生合成デザインにより、ブラジル産キク科低木の Baccharis の生理活性成分 artepillin Cの生産を目指した。遺伝子源は国産のカワラヨモギ、膜蛋白質のAcPT1を発現させるホストは出芽酵母とした。 本年度は、AcPT1よりトランジットペプチドを除くことで、 artepillin C の生産を大きく改善できた。一方で、AcPT1のコドンユーセージを出芽酵母用に改変した mAcPT1を導入する試みや、プレニル基質供給を補強するため HMG-CoA reductase の高発現も行ったが、残念ながら artepillin C 生産に与える効果は限定的であった。一方で、アクセプタ基質である p-クマル酸のほとんどが細胞外に分泌されるという現象が認められたことから、基質の利用効率を上げるため培地に p-クマル酸を投与したところ、artepillin C の生産が大きく改善された。 その他、培養容器の改善や培養条件の検討などを重ね、結果として培地1リッターあたり 113 μmol(33.9 mg/L medium)の artepillin C を生産することができた。商業レベルから見るとまだ生産量は足りないが、これまでブラジル産の植物材料からしか得ることができなかった artepillin C を、国内に自生する薬用植物を遺伝資源として合成生物学によりその生産を達成したことの意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Artepillin C は、プロポリスの生理活性成分として最も注目されている成分であり、とりわけ機能性食品の分野では関心がが高い。本年度は、33.9 mg/L medim の生産が達成できたことを一区切りとして論文化を行い、研究成果は Nature Publishing Group の新しい雑誌、Commun. Biol. に掲載された。これを受けて2019年10月25日、京都大学よりプレスリリースを行なった。その成果はまた、財経新聞やバイオインダストリー協会の機関誌、バイオサイエンスとインダストリーにも取り上げられた。 一方、輸送工学に関しては、lipid transfer protein (LTP) のうち1種類ではプレニル化化合物の生産に影響があることは認められたものの、むしろ負の効果があったことから LTP 遺伝子を用いることはやめ、その代わりに母植物で artepillin C の細胞外分泌を行なっていると期待される輸送体遺伝子として、有機化合物の細胞外分泌に関与することが知られる ATP-binding cassette トランスポータのファミリーと、MATE 型輸送体のファミリーに着目し、輸送工学を進めることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、AcPT1の進化工学による触媒機能の改変を行う。プレニル化酵素 AcPT1 は、フェニルプロパノイドのp-クマル酸をアクセプタ基質として、そのm-位に2つのプレニル基をステップワイズに導入する特徴がある。2つのプレニル化の基質特異性を比較すると、p-クマル酸よりもそのモノプレニル体の方が良い基質になる。現在の生産系における問題の一つが、酵母細胞内で生産させたp-クマル酸が細胞外に放出されてしまい、その利用効率が低いことが挙げられる。そこで、進化工学によりAcPT1にランダムなアミノ酸変異を導入し、スクリーニングによってその変異体プールからp-クマル酸に対して高アフィニティーの変異型AcPT1、あるいは触媒効率の高い変異酵素を得る。それらを、タンデムカセットベクターpESCにより、PAL、C4H、CPR、AcPT1と合わせて酵母に発現させ、artepillin C の生産向上を目指す。 輸送工学からのアプローチとしては、ホストの酵母から基質の p-クマル酸が排出されるのを抑制するため、酵母内在のアニオン・トランスポータの検索とその遺伝子破壊を試み、p-クマル酸の排出を抑えることでartepillin C の生産向上を目指す。さらに、ATP-binding cassette トランスポータのファミリーと、MATE 型輸送体のファミリーについて、大規模トランスクリプトームデータから、これらのファミリーに属するメンバーのリスト化を行い、酵母へ導入できる遺伝子の洗い出しを行い、酵母における発現を試みる。
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Remarks |
財経新聞、2019/10/27 「京大ら、雑草からアルテピリンC活性酵素を発見 高品質プロポリスの国産化に期待」 https://www.zaikei.co.jp/article/20191027/536903.html
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Research Products
(12 results)