Outline of Annual Research Achievements |
ペプチド系天然物の多くは, 非リボソームペプチド合成酵素 (NRPS) により生合成される. NRPS によるペプチド合成には, 20種類のタンパク質性アミノ酸以外に, 非タンパク質性アミノ酸も使える利点があり, 創薬への期待が高い. しかしながらNRPSは, アミノ酸を選別するアデニル化酵素の基質特異性の高さから, 様々な種類のペプチドを含む化合物ライブラリーの構築には適していないとされている. 一因として, 実験事実に基づいたアデニル化酵素の酵素化学的性質 (基質認識の厳密性と寛容性) の理解が乏しいことが挙げられる. また, NRPSは複数の酵素ドメインが繋がった超巨大タンパク質 (Mw: 300-1600 kDa) として存在している. このようなタンパク質を活性型として発現・精製することは, 簡単なことではない. いかなるタンパク質であっても, 本来の機能をもって自在に発現できる遺伝子発現系を構築することが理想であるが, 実現するのはまだまだ難しい. そこで, これら問題を一挙に解決できる基盤技術を開発した. 本技術はアデニル化酵素選択的ラベル化剤を活用し, 内在的に発現するすべてのNRPS アデニル化酵素の基質特異性に関する情報を速やかに読み出す技術である (Activity-based protein profiling of NRPSs, ABPP-NRPSs). 本年度は, グラミジンS生合成系をモデルに, ABPP-NRPSs を物質生産と連結することで, 既知化合物1個, 新規化合物4つの創製に成功した. また, 1つの非タンパク質性アミノ酸のグラミシジンS骨格への導入に成功した. さらに, 有機合成化学を組み合わせることで, グラミシジンS骨格中の非タンパク質性アミノ酸を修飾することに成功した。
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