2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of single molecule near field optical tweezer and creation of light-functional molecular arrangement
Publicly Offered Research
Project Area | Nano-Material Manipulation and Structural Order Control with Optical Forces |
Project/Area Number |
19H04681
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今田 裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80586917)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光圧 / 分子操作 / 走査プローブ顕微鏡 / プラズモン / 単一分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
個々の原子・分子を固体基板上に自在に配置し、デザインした機能を発現させる事は基礎科学のみならず応用を見据えた研究展開においても重要な課題である。ボトムアップのアプローチとしての走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた分子操作は広く発展してきているが、STMと光圧を組み合わせた “光”分子操作は実現されていない。本研究の目的は、分子固有の共鳴吸収線を活用してSTM環境下で光分子操作を実現する事である。 固体基板上で分子の光マニピュレーションを実現するためには、分子固有の遷移エネルギーに共鳴する光を照射する事が必要である。さらには、局在プラズモンの電場増強効果と分子固有の共鳴の両方を最大限活用して、固体基板上で分子の光マニピュレーションを実現するためには、分子の共鳴自体が外場に対してどのように変化する/変化しないかを理解することが不可欠となる。連続発振の波長可変レーザーを用いた単一分子からのフォトルミネッセンス(PL)分光において、<0.01 meVのエネルギー分解能と<1 nmの空間分解能を世界に先駆けて達成した。この手法を用いることで精密に励起状態のエネルギー幅を測る事に成功し、金属基板上の4原子層のNaCl薄膜上に吸着した単一フタロシアニン分子の励起状態のエネルギー幅が0.2 meVよりも広いことを明らかにした。さらに、単一分子が感じる静電場やプラズモン場の影響が明らかになり、単一分子の共鳴エネルギーが外場によって変化することを見出した。これらの基礎的な知見は、単一分子に意図した光圧を印加する際に極めて重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局在プラズモンの電場増強効果と分子固有の共鳴の両方を最大限活用して、固体基板上で分子の光マニピュレーションを実現するためには、分子の共鳴自体が外場に対してどのように変化する/変化しないかを理解することが不可欠となる。走査プローブ顕微鏡の探針を単一分子に対して近づけた際に、どのように分子の共鳴が振る舞うかは、これまで調べられていなかった。2019年度までの研究成果として、新しい実験手法を開発し、プラズモンと相互作用しさらに探針直下の強い静電場の中にいる分子の状態を<0.01 meVのエネルギー分解能と<1 nmの空間分解能を世界に先駆けて達成したことは目覚ましい成果といえる。 今後、このような基礎的な知見に基づけば、単一分子に意図した光圧を印加することが可能となり、制御された分子操作が実現されると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
固体基板上に吸着した分子を光照射によって動かすことには、これまでにも何度も繰り返し成功している。しかしながら、これまではそのメカニズムを記述することが困難であった。具体的には、分子共鳴が分子移動前後でどのように変化するのかは明らかになっていなかったことが原因で、光誘起の局在電場により生じるポテンシャルエネルギープロファイルがどのように分布しているかが描くことができていなかった。2019年度の成果に基づいて、分子移動前後で局在電場との相互作用がどのように変化するかは明らかになったため、この理解に基づき、分子操作のメカニズム解明を早急に実施する。
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