2019 Fiscal Year Annual Research Report
中性子を用いた複合アニオン化合物の構造同定と物性解明
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04683
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
南部 雄亮 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60579803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 物性実験 / 中性子散乱 / 複合アニオン / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 物質が層状構造を持つには、構成する各層が格子整合することが必要である。高圧合成法により層の圧縮率の違いを利用することで、常圧では得られない物質を合成できる。Ba2CoO2Ag2Te2を新たに合成し、既知物質で最長のCo-O結合長を持つことを突き止めた。磁気構造は群論に基づく解析を行い、20 Kでの磁気モーメントは1.9 muBであった。これは、Co平面四配位を持つ物質の傾向に比して小さい。長いCo-Oのために結晶場が変化し、軌道自由度が実効的に減少したためと考えられる。成果論文はInorg. Chem.に受理済である。 (2) BaCrO3の複合アニオン化を行い、水素置換に成功した。本物質に中性子回折を行い、結晶・磁気構造同定を行った。決定した磁気構造は全てのCrが反強磁性的に並ぶことがわかった。積層方向のCr-Cr間は2.2 Aと短いため、超交換相互作用に加えて直接交換の存在が示唆される。実際、磁気秩序温度TNは375 Kとなり、母物質BaCrO3と比較して磁気相関が強くなっていることがわかる。第一原理計算からは、アニオンによってCr-Cr間距離が変化すること、また、それに伴い磁気相互作用も変化することが分かった。成果は現在論文投稿中である。 (3) 鉄系梯子型物質の複合アニオン化を行った。母物質BaFe2Se3、BaFe2S3はそれぞれブロック型、ストライプ型磁気構造を示し、双方ともに圧力下で超伝導を示す。X線回折、電気抵抗、光学伝導度測定、粉末中性子回折によりBaFe2(S1-xSex)3の温度・濃度相図の決定を行った。x = 0.23で磁気構造が変化すること、xの全範囲に渡って構造相転移が磁気秩序よりも常に高い温度で起こることなどがわかった。特に後者は、鉄系化合物で重要な軌道自由度がこの物質群にも寄与していることを示している。成果は現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 鉄系化合物の関連物質としてLaMnPOが知られている。本物質は絶縁体で反強磁性秩序を示し、面間方向の磁気モーメントがチェッカーボード型構造を取る。鉄系化合物では未だチェッカーボード型秩序は確認されておらず、磁気構造の起源を探ることは、遍歴・局在性を解明し、正しい磁性描像を得る上で重要である。また、類似物質LaMnAsOを水素置換系では、水素濃度の増加に伴って反強磁性絶縁体から強磁性金属に劇的な変化を示すことが知られている。これはAsのp軌道を介した超交換相互作用の変化に起因すると考えられる。今回、バルク物性から強磁性と反強磁性のクロスオーバー的な振る舞いが見られているLaMnPO1-xDxについて、高濃度域のx = 0.75と0.95について磁気構造を決定した。x = 0.75は面内方向にモーメントを持ち、G型反強磁性を示す。Asの場合は面直モーメントだったため、Pによって面内方向に変わったことは興味深い。一方、x = 0.95の方はモーメントが面直方向を向いており、水素の濃度によって多彩な変化を見せていることがわかる。成果は現在論文準備中である。 (2) 構造の量子臨界という概念からBa1-xSrxAl2O4が注目を集めている。母物質のBaAl2O4は結晶性の高い物質だが、BaをSrで置換していくことで、10 %以下で構造相転移が完全に抑えられ、20 %弱のところでアモルファス状態に遷移していくことが報告されている。この違いを微視的にみるため、中性子散乱を用いてフォノンの状態密度測定を行った。その結果、エネルギー依存性からx = 0ではvan Hove特異点が見えているものの、Sr濃度が増えるにしたがって低エネルギー側のボソンピークにシフトしていく様子を確認した。現在、第一原理計算の結果と合わせて、論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 引き続き、新学術領域内の共同研究により、中性子回折を用いた結晶・磁気構造解析を進める。また、物質のフォノン、磁気励起の解明のために、非弾性散乱も並行して遂行していく。 (2) Ruddlesden-Popper型ペロブスカイトPb3Fe2O5F2について、これまでにバルク物性と結晶・磁気構造解析から物質の静的構造についての結果を論文にまとめ、現在投稿準備中である。今後は、HOMO-LUMOカップリングで説明できる結晶場と磁気異方性の微視的起源を探るため、中性子非弾性散乱を行う。第一原理計算から交換相互作用を見積もり、それに基づくスピン波計算を行うことで、実験結果の解析を行う。 (3) 鉄系超伝導の発見から様々な物質が開拓されてきたが、これまでCr系についてはあまり研究されてこなかった。そこで我々はBaCr2P2に着目し研究を進めている。バルク物性の結果からは磁気秩序が検出できないため、粉末中性子回折を行った。その結果、ワイス温度以上の80 Kと測定最低温の3 Kでは磁気反射も磁気散漫散乱も見えず、中性子の時間スケールでも磁性が完全に抑えられていることが分かった。弾性散乱領域で見えない磁気信号を探るため、中性子非弾性散乱を行い、磁性の抑制の原因を探る。
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[Presentation] Plastic deformation of the moving magnetic skyrmion lattice in MnSi under electric current flow2019
Author(s)
D. Okuyama, M. Bleuel, J. S. White, Q. Ye, J. Krzywon, G. Nagy, Z. Q. Im, I. Zivkovic, M. Bartkowiak, H. M. Ronnow, S. Hoshino, J. Iwasaki, N. Nagaosa, A. Kikkawa, Y. Taguchi, Y. Tokura, D. Higashi, J. D. Reim, Y. Nambu, T. J. Sato
Organizer
The 3rd Asia-Oceania Conference on Neutron Scattering 2019
Int'l Joint Research
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[Presentation] Spatial inhomogeneous deformation of the moving magnetic skyrmion lattice in MnSi under electric current flow2019
Author(s)
D. Okuyama, M. Bleuel, J.S. White, Q. Ye, J. Krzywon, G. Nagy, Z. Q. Im, I. Zivkovic, M. Bartkowiak, H.M. Ronnow, S. Hoshino, J. Iwasaki, N. Nagaosa, A. Kikkawa, Y. Taguchi, Y. Tokura, D. Higashi, J.D. Reim, Y. Nambu, T.J. Sato
Organizer
International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019
Int'l Joint Research
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