2019 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis of POM Complexes containing Multiple-bond Character between a Main Group Element and Transition Metal and their Fine Control of Self-assembly
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04687
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長田 浩一 東北大学, 理学研究科, 助教 (70813830)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 自己集合 / 複合アニオン型POM錯体 / 化学的官能基変換法 |
Outline of Annual Research Achievements |
新学術領域三年目、「ポリオキソメタレートの化学反応による直接官能基変換法の確立」を目指して研究を行なった。 ポリオキソメタレート(以下POM)は、化学式が [MxOy]n-(M = W, Mo, V, Ti, Nb, Al など)で表される分子を指す呼称で、4族から7族の遷移金属イオンの周 りにオキソアニオンが配位した [MO6]を基本骨格とした多面体がオキソ架橋により縮合して形成される多核錯体である。POMは、様々なサイズ・構造の設計、電 荷・含異種元素の精密に調整することが可能であり、分子認識化学・材料科学・触媒化学などへ展開されている。本研究では、これまでとは異なる形式の複合ア ニオン型POM錯体の創製を目指す。すなわち、M=O結合を他の典型元素 (O → S, Se, N) に置き換えたPOMの合成と性質解明を行う。一般的に高周期典型元素-遷 移金属間の多重結合に対応するHOMO準位は高く、LUMO準位は低くなることが知られているので、特有の多電子酸化還元挙動を示す。従って、含典型元素-遷移金 属間多重結合を有するPOMの創製は新たな物性を示す材料科学への展開に繋がるものと考えられる。 本研究では、デカバナデート(V10)、ドデカバナデート(V12)、トリデカバナデートユニット(V13)、ヘキサモリブデート(Mo6)を合成し、これらに対し硫化剤を加えることでM=O結合部位(M = V, Mo)をM=S結合へと変換する試みを行なった。その結果、粉末X線、SEM-EDX測定、XPS分析、IR測定などにより、バナデートおよびモリブデートに硫黄原子が組み込まれていることが明らかになった。今後は、構造を明らかにするため単結晶の作成、電子顕微鏡による考察を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度は、「ポリオキソメタレートの化学反応による直接官能基変換法の確立」を目指して研究を行なった。 バナジウムを中心金属としたデカバナデート(V10)、ドデカバナデート(V12)、トリデカバナデートユニット(V13)、およびモリブデンを中心金属としたヘキサモリブデート(Mo6)をそれぞれ合成し以下の反応に用いた。 1)POM錯体の硫化反応 M=O結合部位をM=S結合へと変換する試みを行なった。IR測定から、M=O結合や架橋M-O-M結合の伸縮振動が減少するとともに硫黄が含まれた物質が生成することが粉末X線、SEM-EDX測定、XPS分析、CSI-MS測定などにより明らかになった。しかし、未だ単結晶が得られておらず、構造は明らかにできていない。 2)POM錯体のイミド化反応 M=O結合部位をM=NR結合へと変換する試みを行なった。バナジウムを中心金属とするPOM錯体においては、未だ構造は決定できていないが、モリブデンを中心金属とするPOM錯体はMo=NR結合を有するヘテロPOM錯体の合成に成功し、その構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構造を明らかにするため単結晶の作成、電子顕微鏡による考察を行う予定である。 また、硫化反応の反応性を制御するため、かさ高い置換基を導入したPOM錯体を利用する予定である。さらに、CV測定を行うことで物性評価を行い、最終的には触媒反応への展開を目指す。
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