2019 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-anionic alternative stacked films for the novel photon up-conversion materials
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04691
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
由井 樹人 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50362281)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン / フォトン・アップコンバージョン / LDH / Layer-by-layer |
Outline of Annual Research Achievements |
低エネルギーな長波長光を高エネルギーな短波長光へと変換するフォトン・アップコンバージョン(PUC)は、太陽電池をはじめとする光エネルギー変換系のなどの要素技術として極めて重要である。特に三重項消滅機構(TTA)によるPUCは、微弱な太陽光下でもPUC可能な技術であるが、溶液中では2回以上の分子の拡散衝突過程を必要とするため効率向上に限界がある。申請者らは、無機層状化合物(clayなど)に色素を固定化することで、拡散の限界を超えた反応が生ずることを見出している。本研究では、複数のPUCアニオン性色素をアニオン交換性の層状化合物LDHに交互積層した複合アニオン膜を作成するとともに、本材料を用いた拡散限界を超えたPUC系を構築することを目的としている。本年度の主要な研究実績を列挙する。a) アニオン性発光性分子の合成とLDHの交互積層体の合成:通常PUC用いられている発光性材料は非イオン性かつ非水溶性の分子が多かった。本研究目的を鑑みアニオン性の発光材料の合成およびLDHとの複合化に成功した。b)アニオン性増感剤Pdポルフィリンの合成およびLDHとの交互積層体の合成:同じくアニオン性の増感材の合成に成功するとともにLDHとの複合化に成功した。c) POMや層状半導体など異種複合アニオンとLDHと の交互積層体の合成:系の拡張を目的にポリ酸(PMO)をはじめ、様々なアニオン性の分子や層状化合物とLDHとの複合化に成功した。次年度は、これらの成果を元に新たな光機能性複合アニオン材料の創生を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、無機層状化合物の一種であるLDHを鋳型としたアニオン性色素とLDHとの相互積層膜を用いることで、積層膜中でも効果的にエネルギー 移動が進行することを見出している。この現象を応用し、複合アニオン積層膜を用いたフォトンアップコンバージョン(PUC)系の構築を行ってきた。前年度までの研究では、 以下の成果を得ることができた。a) LDH (層状複水酸化物)の合成:下記する目的に合致したLDHを合成した。b) LDHを鋳型とする低分子系光機能分子のLbL(layer-by-layer)膜の合成:LbL法は任意の積層単位で分子が積層可能な複合化手法である。しかしLbL法よる複合化は、高分子系の化合物やポリイオン性の層状化合物に限定されており、低分子系の積層に関する知見は極めて乏しい。申請者らは、LDHを鋳型・足場とすることで、低分子系色素であってもLbL積層が可能であることを見出した。c) PUC用アニオン性色素の合成:研究目的であるLDHを鋳型とした低分子系PUC用色素複合体の作成にはアニオン性の色素が必須である。有機合成的な手法によりPUC用アニオン性色素の合成に成功した。d) PUC色素とLDHとの複合化:アニオン性色素合成の成功に伴い、LbL法による複合膜の作成に成功した。e) アニオン性色素/LDHの構造解析:本複合膜は極めて薄い薄膜形態をしているため、通常の構造解析ではその構造を明らかにすることは困難であった。GISAXS法などの複数の構造解析手法を用いることで、膜の微細構造を明らかにすることに成功した。f) 異種化学種の積層化:本研究の主眼であるLDHとアニオン性色素意外に、層状半導体やポリ酸など、これまで積層方法が確立してなかった化学種に対してもLbL法による積層が可能であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果および研究で明らかになった問題点を克服するため、以下の検討を同時並行的に行い、目的達成を目指す。1)アニオン性PdポルフィリンとLDHとの交互積層:アニオン性増感剤として中心金属としてPdを有するポルフィリン(PdTCPP)の合成に成功しているが、従来手法ではLDH積層において十分な吸着量を確保できなかった。アニオン性置換基の異なるPdポルフィリンを合成し複合体を完成させる。2)増感剤/発光性分子/LDH複合体: 目的とする、前述のアニオン性増感剤と発光性分子をLDHと複合化させる。これまで増感剤と発光性分子を交互に積層させることを試みているが、十分な発光特性を観測するに至らなかった。これは、増感剤と発光性分子がお互いに独立ドメインを形成し両者の相互作用が十分に発現しなかったためと考えられた。増感剤と発光性分子を同一層に混合吸着させたLDH複合膜の合成を行い、これらの問題点を克服する。3) フォトン・アップコンバージョン(PUC)反応の観測: 課題2)で得られた膜に対してレーザー光を用いた分光分析を行う。予備検討では、通常の定常光においてPUC反応が観測されなかった。これは、光源の光密度が弱いため十分な励起状態濃度が得られなかったためと考えられる。これらの問題点を克服すべく、光源として光量の強いレーザー光源を用いてPUC反応を観測する。4) 機能性分子/LDH複合膜:申請者らは、機能性アニオンとして有機色素に着目して研究を行ってきた。さらなる展開として、新たな機能を有するアニオン性分子の積層にも興味がもたれる。班内および班間の共同研究を通じて、ポリオキソメタレートとLDHとの交互積層に成功している。本膜の電気化学・触媒特性を明らかにするとともに、他の研究グループが開発した機能性分子との交互積層と機能化にも挑戦する。
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Research Products
(12 results)