2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical design of high-performance mixed-anion compounds
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04697
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
越智 正之 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10734353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン化合物 / 第一原理計算 / 遷移金属酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合アニオン化合物の特徴的な性質の一つが、複数のアニオン種が共存していること、それゆえにそれらの配置の不規則性あるいは規則性が非自明なことが挙げられる。当該年度、我々はバナジウム酸水素化物SrVO2Hについて、アニオン配置の規則性の起源を第一原理計算によって明らかにした。この物質はアニオンが規則配置することで知られており、かつシンプルな結晶構造をしている。計算は複数のアニオン配置について第一原理計算によって全エネルギーを評価し比較することで行った。比較的小さな2x2x2スーパーセルで計算をおこなったものの、計算したアニオン配置は数百通りにおよんだ。計算および解析の結果、以下2つの側面によってアニオンの規則配置の安定性が特徴づけられることがわかった。1つは、バナジウムに対して2つの水素がtrans配置することが、d2結晶場にとってエネルギー的に有利なことである。これは先行研究でも指摘されていたが、ごく一部のアニオン配置に限定した解析がなされていた。今回様々なアニオン配置についてtrans配置数とエネルギーとの相関を見ることで確かめられた。もう1つは、水素のtrans配置の方向(軸の向き)が隣接したバナジウム同士で揃っていることである。そうすることで、結晶格子が揃った向きに縮むことができる。ここで、O2-イオンとH-イオンとは大きさが異なるため、SrVO2Hは水素の揃っている軸方向に著しく格子定数が縮むことが知られている。実際、立方体格子に固定した安定化をすると、規則配置の安定性は大きく損なわれることも確かめられた。以上の研究成果により、アニオンの規則配置に関する重要な知見が得られた。これらの成果は学会や論文で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複合アニオン化合物におけるアニオン配置の複雑性に注目した計算および理論解析を実行することで、その性質を明らかにするような重要な知見が得られた。ここで得られた知見は、本研究で対象とした物質に限らず、より広い範囲で(少なくとも部分的には)成り立つことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は複合アニオン化合物のアニオン配置を制御することを通した高機能物性の実現にむけた理論解析を進めていきたい。
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