2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel synthetic process of metal oxynitrides by using solid state nitriding agents - Clarification of nitriding mechanism and microstructural analysis -
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04699
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片桐 清文 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (30432248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン化合物 / 酸窒化物 / 固体窒素源 / 構造解析 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合アニオン化合物では、その特異な配位構造や結晶構造に由来して単アニオン系とは根源的に異なる革新的機能が発現することから、新規機能材料として期待されている。しかし、酸窒化物合成においては、一般的に毒性の高いアンモニアガスを用いた熱処理が必要であり、合成は必ずしも容易でない。前回の公募研究では、Zn-Ga層状複水酸化物(LDH)を前駆体に用い、尿素を窒素源としたGaN:ZnOの新規合成法を開発した。さらに、その窒化メカニズムを領域内の共同研究を通じて明らかにした。本研究課題では、GaN:ZnO固溶体酸窒化物とペロブスカイト型酸窒化物を対象として、様々な固体窒素源を用いた酸窒化物合成における窒化メカニズムの解析を行い、得られる酸窒化物の微細構造に窒化プロセスの違いが及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を実施してきた。 2019年度は、まずGaN:ZnOの合成について、尿素に加え、メラミン、C3N4を窒素源として用いて合成することに取り組み、それぞれ単相での合成を達成した。得られた試料を各種手法で分析した。なかでも、計画研究A02の野田グループとの共同研究で実施した71Ga固体NMR測定によって、得られたGaN:ZnOのGaまわりの微細構造が用いる窒素源によって大きく異なっていることが分かった。また、ペロブスカイト型酸窒化物の合成においては、前駆体となる酸化物を水溶性金属錯体を用いた水熱合成法で調製し、それに尿素を窒素源とした窒化反応を行うことでSrNbO2NならびにSrTaO2Nの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の尿素に加え、固体窒素源として新たにメラミンとC3N4を用いたGaN:ZnOの合成については、組成や反応温度、反応時間を最適化することでいずれの系でも単相で合成できる条件を見出すことができた。 得られたそれぞれの試料は、XRD測定やUV-vis-DRS測定においては、有意な差はなかったが、71Ga固体NMR測定において、尿素を用いたものとメラミンもしくはC3N4を用いたもので明確な差があることを明らかにした。この違いは、GaN:ZnOの光触媒活性にも影響を与える可能性があり、さらなる解析が固体窒素源を用いた酸窒化物合成の理解に大きく寄与するものと考えられる。 さらにペロブスカイト型酸窒化物の合成については、前駆体となるLa2Ti2O7やSr2Nb2O7などを水熱合成法を用いて合成することに成功し、これらをLaTiO2NやSrNbO2Nなどの酸窒化物に転換するアプローチに関しても尿素を窒素源に用いることで成功している。この過程で、それぞれ反応系に水熱合成時に複製するLa(OH)3やSrCO3が共存することが尿素を用いた窒化反応に必須であり、その役割についても解明が進みつつある。 以上を総合的に勘案し、本研究は当初の計画に対し、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究において、様々な固体窒素源を用いたGaN:ZnOの合成を達成している。71Ga固体NMR測定によって得られたGaN:ZnOのGaまわりの微細構造が用いる窒素源によって大きく異なっていることが分かり、この違いが光触媒活性に大きく影響することが考えられる。そこで領域研究の強みを活かし、本研究領域の計画研究や他の公募研究のメンバーとの共同研究を積極的に実施し、可視光応答水分解光触媒としての活性評価を犠牲剤を用いた酸素発生反応を中心に実施していく。 また、ペロブスカイト型酸窒化物の合成については、2019年度に達成した尿素を固体窒素源に用いた合成に加え、メラミン、シアヌル酸、C3N4を用いた合成にも展開する。これらにおいて、酸窒化物を構成する金属元素の種類や用いる窒素源ごとにどのような窒化過程を経ているかを解析し、固体窒素源を用いた酸窒化物合成の包括的な理解への展開を目指す。 すなわち、今後も本研究領域メンバーとの有機的連携を積極的に実施し、本研究領域が目的としている複合アニオン化合物に関する新しい学理の構築に資するよう研究を推進していく。
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