2019 Fiscal Year Annual Research Report
複合アニオンによる触媒活性制御
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04700
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 雄太 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (80727074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン / 触媒 / エレクトライド / アンモニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は複合アニオンによる触媒活性制御の実現を目指すものである。通常の金属酸化物触媒において、酸化物イオン以外のアニオンを導入することで、その触媒活性の制御を目指すものである。本研究では以下の触媒材料について研究を行っている。(1)メタン酸化触媒、(2)アンモニア合成触媒、(3)エレクトライド触媒。以下にそれぞれの概要を述べる。 (1)メタンは天然ガスの主成分であり、それを有用な炭素源として活用するためにはメタンの強固なC-H結合を活性化することのできる触媒が必要であり、後周期遷移金属酸化物が有用であることが知られている。本研究では、それらの酸化物に酸化物イオン以外のアニオンを導入することで、その触媒活性を変化させ、それを制御するための理論研究を行っている。 (2)アンモニアは肥料として重要であり、ハーバー・ボッシュ法により、窒素と水素から合成される。チタンの水素化物がその触媒反応において重要であることが近年見出されているので、その機構の解明を理論的に行っている。 (3)重アルカリ金属亜酸化物の研究例は少なく、電子状態の詳細はまだ分かっていないのが現状である。様々な実験データから、その電子状態は金属のような自由電子の海にカチオン性のクラスターが浮かんだような状態になっているのではないかと予測されている。本研究では重アルカリ金属亜酸化物の電子状態について密度汎関数法を用いて理論的研究を行った。その結果、重アルカリ金属亜酸化物はエレクトライドやアルカリド(アルカリ金属がアニオンとして存在する物質)のような電子状態をとる可能性があると分かった。この特性を応用した高機能触媒などへの展開を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
酸化物に酸化物イオン以外のアニオンを導入することで、その触媒活性を変化させることが可能であるという理論計算の結果を得、本研究の重要な目的の1つが達成された。 また、アルカリ金属亜酸化物の研究では、ルビジウムやセシウムの亜酸化物において、計算予測された仕事関数が十分に低く、高い電子放出能力があることが明らかとされ、それらの構造中においていくつかのアルカリ金属原子はアニオンのような電子状態を有することが明らかとなった。本結果は大変興味深く、論文として成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
メタン酸化触媒においては、最初のC-H結合の切断およびそれに続くC-Cカップリングなどがメタンの有用な化合物への転換において重要であるが、初年度の研究において、第一段階目のC-H結合の切断の促進に有用なアニオンついて重要な知見を得たので、今後はそれをもとにして第二段階であるC-Cカップリングの促進のために必要とされるアニオンの条件などを理論の立場から明らかにしていく予定である。
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Research Products
(36 results)