2019 Fiscal Year Annual Research Report
錯体分子集積による複合アニオン型極性物質群の合成と機能創発
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04701
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大谷 亮 九州大学, 理学研究院, 准教授 (30733729)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 分子集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナイトライドアニオン(N3-)、シアノアニオン(CN-)から成る五配位構造の極性錯体分子 [CrN(CN)4]2- あるいは [ReN(CN)4]2- を最小単位として、室温で分子集積することで、K2[CrN(CN)4].H2O と K2[ReN(CN)4].H2O の単結晶の作成とそれらの構造解析に成功した。Mn 類縁体と同系の構造であり、錯体分子が一次元に集積した極性構造であった。極性についてはSHG測定からも確認した。また、K2[CrN(CN)4].H2O 単結晶試料を用いて磁気的特性の評価を行ったところ、一次元鎖内に強磁性的相互作用を有している一方で、2Kまで相転移は示さなかった。 さらに、一次元鎖内の電子状態制御を目的として、d2金属中心をもつ K2[MnN(CN)4].H2O とd1金属中心をもつ K2[CrN(CN)4].H2O の固溶体を合成した。まだすべての割合の合成を完了したわけではないが、これまでの検討から Mn と Cr 化合物の中間の構造をとっており、固溶化できていることが示された。また興味深いことにIRスペクトルでは、シアノ基のstretching modeは2種類観測された一方で、金属とナイトライドイオン三重結合のピークは一種類しか観測されなかった。これは、一次元鎖構造内は固溶化による特異な電子状態をとっていることを示唆している。更に、色の変化も観測されたため、拡散反射スペクトル測定を行ったところ固溶化によるスペクトルの変化が観測された。現在、DFT計算も用いて電子状態解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで明らかにしていたMn化合物に加えて、類縁体Cr、Re一次元鎖の結晶構造を明らかにすることができた。すべて結晶化手法が異なっており、大きな単結晶を得る方法を確立できたことは、今度の機能評価を進める上で極めて重要な結果であると考えている。また、Cr 化合物の磁気挙動と構造相関も明らかにした。磁気構造については更なる評価が必要となるが、極性構造と磁気特性を併せ持つ物質であり、機能性分子材料開発の重要な指針が得られつつあると考えられる。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、固溶体の精密な結晶構造を明らかにするために、粉末試料のシンクロトロンでのX線回折測定を予定している。また、Cr化合物の中性子回折測定による一次元磁気構造の解明および、Re化合物の発光機能評価を行っていく予定である。
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Research Products
(10 results)