2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pb,Biを含む酸フッ化物における特異的な物性の開拓と起源の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Synthesis of Mixed Anion Compounds toward Novel Functionalities |
Project/Area Number |
19H04706
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
岡 研吾 近畿大学, 理工学部, 講師 (80602044)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 酸フッ化物 / スピン再配向 / 精密構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は本年度において酸フッ化物に着目した研究を行った。その研究実績概要を以下に示す。 ・Pb-Ti-O-F系の可視光応答電極触媒反応…PbとTiを含む酸フッ化物Pb2Ti2O5.4F1.2およびPb2Ti4O9F2において、可視光応答光触媒電極反応の研究を行い、これらがよい活性を示す事を発見した。またアパタイト系Pb5V3O12X(X = F, Cl, Br, I)についても同様に可視光応答光触媒特性の評価を行い、Pb-Xの化学結合とバンドギャップの関係を系統的に明らかにした。さらに、Pb2Ti2O5.4F1.2における課題であった表面の疎水性について、アルカリ処理を行うことでそれらが改善されることがわかった。 ・6s2孤立電子対によるO/Fアニオン秩序配列の誘起…同じ結晶構造をとるPb2Ti4O9F2とB2Ti4O11の結晶構造の比較を行った。放射光粉末X線回折による精密構造解析の結果、Pbと共有結合性の強いサイトをFが選択的に占有し、そのためにアニオン秩序配列が起こることがわかった。同様に、第一原理計算においても、共有結合性と構造安定性の評価から、このメカニズムが正しいことが検証された。 ・Pb3Fe2O5F2におけるスピン再配向を伴う構造相転移…Pb3Fe2O5F2のスピン再配向を伴う構造相転移について、スピン再配向の起源がFeの配位構造の変化に伴うHOMO-LUMO相互作用の変化であることを発見した。第一原理計算でもこのメカニズムを支持する結果が得られた。またPbサイトもしくはFeサイトへの元素置換による構造相転移挙動の制御を試みたが、それぞれ数%までしか置換できず、また置換量が少ないためか、相転移挙動に大きな変化は見られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から進めている酸フッ化物の光触媒特性の評価については順調に成果を出し進行している。また6s2孤立電子対と酸素/フッ素の秩序配列の関係についても、それを説明出来る知見が得られた。しかしながら、スピン再配向転移を示すPb3Fe2O5F2における相転移挙動の組成制御については、当初の想定よりも試料合成が難しく、現状狙っていた成果は得られていない。よって、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Pb3Fe2O5F2のスピン再配向を伴う構造相転移において、アニオン複合化物における磁性イオン周辺の局所的な構造の変化が全体の磁性を支配していることを発見した。これは単分子磁石のような、単一の磁性イオンに着目した系の化学を拡張固体系にも応用できることを示唆している。よって、この観点から、さらなる磁性材料の新物質探索を行いたいと考えている。また、PbやBiの孤立電子対によって誘起される構造歪みとアニオン複合化による配位構造の低対称化の二つを活かし、新たな蛍光材料の物質探索を行っていく。
|
Research Products
(4 results)