2019 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン勾配の消費と生成のバランスをとる光化学系I-アンテナ複合体の構造基盤解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04714
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
河合 寿子 (久保田寿子) 山形大学, 理学部, 助教 (10599228)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光化学系I / フェレドキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、緑藻Chlamydomonasの光化学系I-アンテナ複合体を純度よく簡便に精製する方法を検討した。まず、光化学系Iに特異的に相互作用する電子伝達蛋白質フェレドキシン(Fd)を樹脂(CNBr-activated Sepharose)に固定したFdアフィニティーカラムを作製した。これまでは、シアノバクテリアThermosynechococcus elongatus BP-1由来のFdを用いて精製行ってきたが、本研究ではより親和性が高いと考えられるChlamydomonas由来のFdを用いて精製条件の検討を行った。ChlamydomonasのFdは多数のアイソフォームを持つが、今回はFd1とFd2を用いて光化学系Iとの親和性を調べた。まず、20 mgのFd1とFd2を調整して樹脂に固定した。それぞれに60 μg Chlの光化学系I-アンテナ複合体をアプライし、NaClのグラジエントによって溶出した。その結果、Fd1はFd2よりも高いNaCl濃度で溶出され、光化学系Iへの親和性が高いことが明らかとなった。このFd1カラムを用いてさらにBuffer組成やAmphipolを利用した安定化について検討した。各条件における光化学系I-アンテナ複合体の安定性は、低温クロロフィル蛍光スペクトル測定を行いアンテナの解離を調べることで判断した。このようにして、安定な光化学系Iアンテナ複合体を純度よく簡便に精製する方法を確立した。 次に、シアノバクテリアの光化学系Iと集光アンテナについて分光学的実験も行った。糸状性シアノバクテリアの一種であるAnabaenaは他の多くのシアノバクテリアと異なり四量体の光化学系Iを持つ。本研究では、低温クロロフィル蛍光スペクトル測定を行いAnabaenaに於いてもIsiAが発現しており、実際に光化学系Iに光エネルギーを伝達していることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究テーマの競合により、これまで続けていた緑藻Chlamydomonasの光化学系I-アンテナ複合体構造解析から、シアノバクテリア光化学系I-アンテナ複合体の構造解析へと内容をシフトする必要があった。研究当初はChlamydomonasから安定な光化学系I-アンテナ複合体を精製する方法を確立した。その後、研究内容をシフトしたため、シアノバクテリアの細胞を用いて、光化学系Iのアンテナが発現する条件の検討から始める必要があった。また、産前産後休暇を取得したため研究に従事できない期間があった。このような状況から、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、シアノバクテリアの一種であるAnabaenaを用いて、クロロフィル含有タンパク質IsiAの詳細な発現条件の検討を行う。これまでに他の多くのシアノバクテリア同様、Anabaenaに於いても鉄欠乏時にIsiAが誘導されることを示した。今後はさらに詳細な発現条件を検討する。具体的には、鉄欠乏条件で培養開始から何日目に最も多くのIsiAが発現しているのか、発現したIsiAは実際にどの程度光化学系Iに結合しているかについて低温クロロフィル蛍光スペクトル測定やウエスタンブロットにより検証する。安定したIsiA発現条件が得られない場合は鉄のキレート試薬を用いて条件制御を試みる。このようにして、光化学系I四量体-IsiA複合体の精製に向けた基盤を構築する。
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