2019 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体NADP供給とプロトン駆動力のバランス制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04715
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
川合 真紀 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10332595)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | NADP合成 / NADキナーゼ / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体の光化学系では、リニア電子伝達(LET)の最終電子受容体NADP+の還元によってNADPHが生成する。環境変化によりエネルギー供給過剰となると、電子受容体NADP+は枯渇し、電子フローはサイクリック電子伝達(CET)へと切り替わる。この時、新たにNADP+が供給されると電子フローは再度LETへ切り替わる事から、NADP+供給システムは光合成電子フロー切り替えを介したプロトン駆動力の制御要因と推定される。しかし、これまでの光合成研究の主流は還元型NADPHの検出であり、様々な光環境下での酸化型NADP+の正確な動態は計測されておらず、NADP+供給制御の重要性には着目されてこなかった。 我々の開発した高精度のNADP+定量法によって、受光開始時のタイミングではLETに必要なNADP+が存在しないこと、NADP+は光誘導的にNAD+とATPから合成されNADPプール(NADP+とNADPHの総和)が増大することを明らかにしてきた。ここから、光合成開始の初期段階では、電子伝達にNADP+を必要としないサイクリック電子伝達(CET)が先に駆動し、それによって生成したATPからNADP+が合成されると推定された。その後にLETが駆動してNADP+からNADPHが生成するという、葉緑体NADP+合成を中心とした電子フロー制御回路の存在が示唆されている。本研究ではこの制御回路の存在を証明するため、I. CETとNADP+合成の交互作用の解明、II. 光合成電子伝達経路によるNADK2活性制御機構の解明の2テーマを実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は葉緑体NADP+供給とプロトン駆動力のバランス制御機構の解明を目的としており、研究期間中に、I. CETとNADP+合成の交互作用、および、II. 光合成電子伝達経路によるNADK2活性制御機構、の2点の解明を計画している。項目Iでは、脱共役剤によってCET由来のプロトン駆動力を低下させた時のNADPプールサイズの光応答変化をモニタリングした。いずれの脱共役剤においてもATP生成量は低下していたが、NADP+合成を顕著に阻害した薬剤やほとんど影響しない薬剤まで作用に大きな違いが認められた。これらの結果から、CETがNADP+合成に大きく寄与することが明らかとなったが、NADP+合成駆動におけるCETの意義はATP供給だけではない可能性が示唆された。 項目IIでは、NADK2活性制御機構の解明を目的として研究を行った。植物のNADKは約700aaに及ぶ長い配列をN末端側に有するが、一方、シアノバクテリアのNADK(Sll1415、Slr040)にはそのような領域は存在しない。そこで、シアノバクテリアのNADKに葉緑体への移行配列を付加し、シロイヌナズナのnadk2変異体に導入し、表現型を相補できるかを調べた。その結果、恒光条件では野生型レベルまで生育を改善することが分かったが、一方、明暗条件下では、NADK2の機能を完全には相補することができず、NADK2のN末端領域に明暗条件に応答した活性制御に関わる機能が存在する可能性が示された。これらの状況から、研究の進捗状況は概ね順調と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果によって、項目Iで目的とする CETとNADP+合成の交互作用の解明のうち、CET側からのNADP+合成に及ぼす作用が明らかとなった。脱共役剤の種類によって阻害されるプロトン駆動力の構成成分(プロトン勾配、膜電位)の違いが NADP+合成にどのように作用するのかを明らかにするとともに、NADP+側からのCETに対する作用を評価する。栽培環境制御やNAD+合成変異体を活用することで葉緑体NADP+量を制御する手法は確立済みであることから、NADP+量を段階的に制御した時のCET活性を計測することで、葉緑体NADP+の量的制御で光合成電子伝達フローが切り替わることをin vivoで明らかにする。項目IIでは、シロイヌナズナのnadk2変異体に、葉緑体移行配列を付加したシアノバクテリアNADKを導入した植物体を用いて、明暗条件における相補の不完全性の原因が活性制御機構が働かないことであるかを調べる。また、NADK2のN末端領域内の注目されるアミノ酸に変異をいれた変異型NADK2を発現させるコンストラクトを作成し、nadk2変異体に導入し、これらのアミノ酸の活性制御への関与を調べる。
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] NADK3, one of NAD kinases has a principal role in photorespiration in Arabidopsis2019
Author(s)
Daimu Tanaka, Shota Suzuki, Atsuko Miyagi, Masaru Kono, Ko Noguchi, Wataru Yamori, Yuuma Ishikawa, Masatoshi Yamaguchi, Maki Kawai-Yamada
Organizer
17th International Congress on Photobiology, 18th Congress of the European Society for Photobiology
Int'l Joint Research
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