2019 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of far-red light in thylakoid reactions
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04718
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺島 一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40211388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成有効放射 / 光化学系Ⅰ / 遠赤光 |
Outline of Annual Research Achievements |
野外の光は一定の強度であることは稀で、常に変動している。われわれは先に、赤色LEDによる強光と弱光とが繰り返す変動光環境下にシロイヌナズナの葉をおくと、1時間以内に光化学系Iの光阻害が観察できることを報告した。しかし、野外の光環境を想起し、野外の植物が著しい光化学系Iの阻害を受けているとは思えないことから、赤色LEDによる変動光処理には何らかの問題があると思われた。そこで我々は野外の光環境では豊富な遠赤色光に注目し、赤色LEDによる変動光処理時に遠赤色光を共存させれば、光化学系Iの光阻害がほぼ完全に抑えることを見出した。そればかりではなく、赤色光変動光に遠赤色光を共存させると、弱光時の光合成速度が増加することがわかった。これは強光下における熱散逸系機能が、その後の弱光時には遠赤色光によって速やかに解消されるためであった。この熱散逸系機能の解消には、葉緑体チラコイド膜にあるKEA3(H+とK+の対向輸送体)が関与していることを突き止めた。 耐陰性植物クワズイモは、遠赤光がない状態でも変動光による光化学系Iの阻害にかなり耐性であり、しかも、弱光条件で栽培した葉ほど耐性が強い。これは、陽生植物を弱光栽培するとクロロフィルあたりの光化学系Iの反応中心含量やシトクロムf量が低下するのに対して、クワズイモのクロロフィルあたりの光化学系Iの反応中心含量は殆ど低下しない。このため、光化学系Iの反応中心が安全な酸化型となりやすい。クワズイモの色素タンパク質複合体系もこの安全な状態を形成するのに寄与している可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの共同研究を予定していたが、コロナ禍の関係で実現していない。それ以外の点については、順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
葉緑体のステート変化に及ぼす遠赤光の効果を検討する。ステート変化において重要な役割を果たすキナーゼやフォスファターゼの変異体を利用した研究を展開する。また、コロナ禍の様子をみて、まだ行っていない共同研究を行う予定である。 クワズイモのクロロフィルタンパク質複合体の解析を進める。また、多くの陽生植物や陰生植物のレッドクロロフィル(長波長吸収型)の分布を調べ、陽生植物と陰生植物の過剰エネルギー散逸戦略の違いの有無を検討する。
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