2019 Fiscal Year Annual Research Report
タイプ1光合成生物のシトクロム複合体と反応中心の始原型共役反応機構
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04724
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大岡 宏造 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30201966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成 / 反応中心 / 始原型シトクロム複合体 / 電子伝達 / NMR解析 / X線結晶構造解析 / ヘリオバクテリア / 緑色イオウ細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.緑色イオウ細菌のRieske/cyt b型シトクロム複合体の可溶化・精製の検討:これまでの研究経過から、Rieske/cyt b型シトクロム複合体の可溶化・精製のAssay方法として、His-b株を用いることでHis抗体を用いたWestern Blottingによる検出と酸化還元差スペクトルによる検出を組み合わせる事が非常に有効であることを示すことができた。このAssay方法確立により、可溶化画分では、Western Blottingによるcyt bの存在が確認されたが、酸化還元差スペクトルから補因子であるヘムbが外れたアポタンパクであることが示唆された。これにより、ヘムbが酸素に対して不安定である可能性が強く推測されるに至った。そこで嫌気条件下での可溶化・精製を試みるたところ、ヘムbを保持したホロタンパクの画分が回収されるようになり、最終年度(2020年度)の研究進展に向けて大きく前進した。 2.電子伝達タンパク質の分子間相互作用のNMR解析:緑色イオウ細菌由来の15N-Rieske-sol(Rieske ISPの可溶性ドメイン)と14N-cyt c-556を準備し、電子伝達反応にともなう複合体形成をNMRスペクトルのケミカルシフトにより確認した。さらに二重標識した13C, 15N-Rieske-solの大量発現・精製を行い、シグナルの帰属を進めた。その結果、[2Fe-2S]クラスター近傍のL55, V56, H57, W58, A66が相互作用部位であることが明らかとなった。 3.ヘリオバクテリアのcyt b6cc型シトクロム複合体: サブユニットの一つであるdi-heme型cyt ccの大量発現・精製を行い、結晶化およびX線結晶構造解析に取り組んだ。立体構造比較から、モノヘム型のcyt cから遺伝子重複によりdi-heme型cyt ccに進化してきたことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘリオバクテリア反応中心の構造基盤に関わる解析については、当初の予定どおりに構造解析は終了し、論文投稿を目指して解析データをまとめつつある。一方、新たに始めた緑色イオウ細菌反応中心の結晶化・構造解析については、微結晶が得られたものの、その後の結晶化標品の改良には至っていない。並行してクライオ電子顕微鏡解析を進めており、解析可能な単分散グリッド作成が可能であることを確認している。 Rieske/cyt b 型cyt 複合体の可溶化・精製については、ようやく安定標品を調製するノウハウが蓄積し、簡便なAssay方法を確立することにも成功した。今後は可溶化効率を向上させる工夫とともに、Hisタグによるアフィニティ精製、その後のショ糖密度勾配遠心、ゲル濾過による精製方法の確立へと進めていくことができる状況である。 電子伝達タンパク質の分子間相互作用のNMR解析では、二重標識した13C, 15N-Rieske-solを用い 、cyt c-556 と相互作用する部位が[2Fe-2S]クラスター近傍に存在することを特定することに成功した。現在、論文投稿を目指し、解析データをまとめつつある。 ヘリオバクテリアのcyt b6cc型シトクロム複合体については、すでにRieskeサブユニットのクローニングと発現ベクターの構築が終了している。大腸菌での発現も確認済みであり、現在、大量発現と精製を試みている。また複合体の可溶化・精製も試みているが、複合体が解離しやすいという予備的結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
反応中心の構造基盤に関わる解析については、クライオ電子顕微鏡による解析を進める予定である。ヘリオバクテリア反応中心はシトクロムc(PetJ)とFA/FBタンパク(PshB:2[4Fe-4S]型クラスター)をサブユニットとしてもつ複合体であるが、RCの可溶化・精製段階で容易に外れてしまう。すでにPetJ およびPshBサブユニットの大腸菌による大量発現系を構築済みであり、in vitroでの再構成後、構造解析に取り組む。一方、緑色イオウ細菌反応中心はすでにコアタンパクPscAに精製用Hisタグを付加したコンストラクトを作成し、RCの大量調製は可能である。すでにクライオ電子顕微鏡による解析を進めており、本年度中の解析終了を目指す。 Rieske/cyt b 型cyt 複合体の可溶化・精製については、現時点ではβ-DDMによる可溶化が最も効率がよい。しかし簡便なAssay方法が確立できたので、他の界面活性剤による可溶化を試みることを計画している。 ヘリオバクテリアのcyt b6cc型シトクロム複合体については、Rieskeサブユニットの結晶化およびX線結晶構造解析に取り組む予定である。また複合体の可溶化・精製は、現在使用している界面活性剤β-DDMでの可溶化では複合体が解離しやすいので、他の界面活性剤を試みる。 さらにヘリオバクテリアの反応中心の光駆動キノン還元活性を確認するために、光誘起FTIR差スペトルの測定を計画している。また本年度秋以降に、博士課程学生が本領域の海外派遣制度を用いて米国・Kevin博士の研究室に3ヶ月間滞在し、ヘリオバクテリアの形質転換系を教えてもらうことになっている。ヘリオバクテリア反応中心の構造解析においてキノン結合部位と推測されるアミノ酸残基の変異株作成に取り組む予定である。
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[Presentation] Structural Analysis of the homodimeric photosynthetic reaction center with bound quinone from Heliobacterium modesticaldum2019
Author(s)
T. Nakaniwa, R. Mutoh, K. Fushimi, T. Kondo, C. Azai, S. Itoh, T. Mizoguchi, H. Tamiaki, H. Tanaka, H. Oh-oka, G. Kurisu
Organizer
International Symposium on Diffraction Structural Biology 2019
Int'l Joint Research
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[Presentation] Structural Analysis of the homodimeric photosynthetic reaction center from Heliobacterium modesticaldum2019
Author(s)
T. Nakaniwa, R. Mutoh, K. Fushimi, T. Kondo, C. Azai, S. Itoh, T. Mizoguchi, H. Tamiaki, H. Tanaka, H. Oh-oka, G. Kurisu
Organizer
1st Japan-US Binational Semninar 2019
Int'l Joint Research
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