2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstitution and functional analysis of photosynthetic machinery in a patterned model membrane
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04725
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森垣 憲一 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (10358179)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光合成 / 人工膜 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の光合成を行うチラコイド膜には、光合成電子伝達を通じて光エネルギーを化学エネルギーに変換する多様な分子群が2次元膜内に配置されている。本研究は、チラコイド膜における光合成関連タンパク質の動的な分子分布や超分子構造形成が光合成機能にどのように寄与するかを、分子レベルで定量的に解析できる革新的なin vitro評価技術として、固体基板表面に人工チラコイド膜を形成し高感度で機能解析する技術を開発している。そのため、光リソグラフィー技術によりパターン化形成されたポリマー脂質膜に、植物由来のチラコイド膜を導入した。チラコイド膜を高圧処理により断片化し、リン脂質ベシクルを融合促進剤として添加することでパターン化人工膜に導入できる。今年度には、チラコイド膜とリン脂質ベシクルの量比を調節することで、区画内に任意の密度でチラコイド膜を導入できることが分かった。導入されたチラコイド膜のクロロフィル蛍光が電子受容体や阻害剤存在下で増減することから、光化学系II(PSII)の電子伝達活性は保持されていることが分かった。また、光照射によってNADP+よりNADPHが生成されることから、光化学系I(PSI)の電子伝達活性も保持されていることが分かった。さらに、チラコイド膜を導入したパターン化人工膜と高分子エラストマー(PDMS)を接合して厚さ10~100 nmの空隙(ナノ空間)を形成し、その中でチラコイド膜に光照射してNADPH生成を計測することに成功した。ナノ空間を計測の場として用いることで、光合成機能を超高感度で計測することが可能になるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、チラコイド膜における光合成関連タンパク質の動的な分子分布や超分子構造形成が光合成機能にどのように寄与するかを、分子レベルで定量的に解析できる革新的なin vitro評価技術として、固体基板表面に人工チラコイド膜を形成し高感度で機能解析する技術を開発している。2019年度には、パターン化形成されたポリマー脂質膜にホウレンソウ由来のチラコイド膜を導入して、電子伝達活性を計測する技術の確立をめざした。チラコイド膜を高圧処理により断片化し、リン脂質ベシクルを融合促進剤として添加することでパターン化人工膜に導入した。その際に、チラコイド膜とリン脂質ベシクルの量比を調節することで、区画内に任意の密度でチラコイド膜を導入できることが分かった。導入されたチラコイド膜のクロロフィル蛍光が電子受容体や阻害剤存在下で増減することから、光化学系II(PSII)の電子伝達活性は保持されていることが分かった。また、光照射によってNADP+よりNADPHが生成されることから、光化学系I(PSI)の電子伝達活性も保持されていることが分かった。さらに、チラコイド膜を導入したパターン化人工膜と高分子エラストマー(PDMS)を接合して厚さ10~100 nmの空隙(ナノ空間)を形成し、その中でチラコイド膜に光照射してNADPH生成を計測することに成功した。ナノ空間を計測の場として用いることで、光合成機能を超高感度で計測することが可能になるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、パターン化形成されたポリマー脂質膜にホウレンソウ由来のチラコイド膜を導入する技術、電子伝達活性を計測する技術を開発することができた。また、ナノ空間に封入したチラコイド膜に光照射してNADPH生成を計測することに成功し、ナノ空間を計測の場として用いる技術開発の端緒を得ることができた。一方で、課題としては、導入されたチラコイド膜量が比較的少ない(タンパク質密度が低い)、電子伝達活性計測が定性的であるなどの点がある。今年度は、チラコイド膜とリン脂質ベシクルとの混合比、導入条件などを改良してより高密度な膜タンパク質の導入を目指すとともに、導入された膜タンパク質の量や電子受容体、阻害剤との結合定数を推定することを試みる。そのために、領域内研究者との共同研究で、高速原子間力顕微鏡、蛍光分光などによる解析を行う。また、現在、リーズ大学と行っている共同研究を本研究と組み合わせて、PSIIの周辺集光装置である集光性クロロフィルタンパク質複合体(LHCII)をチラコイド膜と同時に再構成し、両者のエネルギー移動を蛍光顕微鏡および時間分解蛍光測定で定量する。さらに、ナノ空間での計測をさらに推し進めて、光合成関連膜タンパク質の機能を超高感度に計測する技術を確立する。
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