2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of PSI cyclic electron transport by the m-type thioredoxin
Publicly Offered Research
Project Area | New Photosynthesis : Reoptimization of the solar energy conversion system |
Project/Area Number |
19H04733
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
桶川 友季 京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (10582439)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 光合成 / 葉緑体 / 電子伝達 / レドックス / チオレドキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、m型Trx の標的タンパク質がPGRL1 であることを明らかにし、その制御機構を分子レベルで解明すること、さらに、m型Trx を介したPSI サイクリック電子伝達制御の生理的意義を明らかにすることを目的に研究をおこなった。 申請書の実施計画に上げていた通り、形質転換植物の作出し、その解析をおこなった。PGRL1 は高度に保存されたシステインを6つ持つ。これまでの研究から、m型Trx がPGRL1とジスルフィド結合を介して複合体を形成することを明らかにした。しかし、m型TrxがPGRL1のどのシステインを認識し、制御しているかはわかっていない。そこで、シロイヌナズナのpgrl1 変異株のバックグラウンドでシステインをセリンに置換したPGRL1タンパク質を発現させた形質転換植物を作出した。6つの異なる形質転換体の作出を試みた結果、WTのPGRL1、6つのうち2つのCysを置換したPGRL1を発現する4つのラインの形質転換体を得ることが出来た。4つのラインについてはWestern BlottingによりPGRL1タンパク質が安定して蓄積することが確認した。また光合成測定により、pgrl1変異の相補を確認することが出来た。一方、PGRL1のその他4つのシステインを置換した形質転換体についてはそれぞれ、30個を超える形質転換体を解析したが、PGRL1を安定して蓄積する個体を得られなかった。しかし、この結果から、PGRL1のその4つのシステインがPGRL1の安定性に寄与することを明らかにすることが出来た。 さらに制御の生理的意義を明らかにするために、光合成の誘導期において光合成パラメーターの解析、およびカルビンサイクルの酵素の活性化を調べた。その結果、m型Trx を介したPSI サイクリック電子伝達制御の生理的意義が徐々に見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の実施計画に上げていた通り、PGRL1のシステインをセリンに置換した形質転換植物の作出することが出来た。さらにWestern Blottingにより4つのラインでPGRL1タンパク質が安定して蓄積することを確かめた。これらの得られたラインは光合成測定により、pgrl1変異の相補することが明らかになり、このシステインの置換はPGRL1の基本的な機能には影響を与えないことがわかった。一方、PGRL1のその他の4つのシステインを置換した形質転換体についてはそれぞれ、30個を超える形質転換体を解析したが、残念ながらPGRL1を安定して蓄積する個体を得ることが出来なかった。しかし、この結果は、PGRL1のその4つのシステインがPGRL1の安定性に寄与することを示唆しており、新しい知見を得ることが出来たと言える。 さらに、これまでに得られている変異体を用いて光合成パラメーターとカルビンサイクルの酵素の活性化を調べた。その結果、m型Trx を介したPSI サイクリック電子伝達制御が効率的な光合成の制御に寄与することを示唆する結果を得ることが出来た。得られた形質転換体も同様の解析に用いることでさらに生理学的意義を解明できる可能性がある。 このように当初の予定通り、目的の形質転換体を得ることが出来、今後得られた形質転換体を使ってTrx mとPGRL1の相互作用を調べることによりPGRL1の制御にどのシステインが必要であるかを示すことが出来るので研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の実験をおこなうことによって制御機構を分子レベルで明らかにする。 (1) m 型Trx によるPGRL1タンパク質の分子レベルでの制御機構解明 本年度、シロイヌナズナのpgrl1 変異株のバックグラウンドでシステインをセリンに置換したPGRL1タンパク質を発現させた形質転換植物を作出することが出来た。今後は得られた形質転換植物を用いてm型Trx との複合体形成に必要なシステイン残基を明らかにする。また、m型Trxによって制御されるシステインが明らかになれば、そのシステイン置換を持つ形質転換植物でPSIサイクリック電子伝達が制御されないことを確かめる。m型Trxを欠損した突然変異体ではPSIサイクリック電子伝達が制御されないため、植物は斑入りの表現型を示す。そのため、m型Trx による制御に必要なシステインを置換した形質転換体でも同様の生育の表現型が見られると考えられる。 (2) m 型Trx によるPSI サイクリック電子伝達のレドックス制御の生理学意義解明 m型TrxによるPSIサイクリック電子伝達の制御がどのような条件で起こるかを調べる。具体的にはm型TrxとPGRL1の複合体形成と解離をWestern Blottingにより検出することによって明らかにする。暗条件、弱光、強光条件など様々な光条件で複合体の形成条件を調べる。また様々な光条件で複合体形成のタイムコースを取ることも考えている。さらに、それぞれの条件における光合成パラメーターをクロロフィル蛍光装置を用いて測定し、複合体形成条件と比較することによって、m 型Trx によるPSI サイクリック電子伝達のレドックス制御にどのような生理的な意義があるかを明らかにすることが出来ると考えている。
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Research Products
(4 results)