2019 Fiscal Year Annual Research Report
中枢単一同定ニューロンでのエングラム形成と消去のin vivoリアルタイム解析
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic regulation of brain function by Scrap & Build system |
Project/Area Number |
19H04767
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
吉原 基二郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 総括研究員 (80222397)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 記憶 / エングラム / ショウジョウバエ / シナプス可塑性 / フィーディング・ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶痕跡(エングラム)の研究が近年進んだが、記憶の素過程と想定されるニューロン同士のつながり形成については、まだよくわかっていない。その機構として、申請者は” ローカルフィードバック仮説”を案出した(Science, 2005)。このミクロの細胞機能をマクロの行動に結びつけるため、ショウジョウバエの摂食行動を司令する” フィーディング・ニューロン” を発見した(Nature, 2013)。この細胞を見ながら機械刺激を摂食行動に連合するパブロフの条件付けを行い、その条件反射成立後の行動変化と細胞の変化を追跡することによって記憶の減衰、消去について解析できる。この記憶形成と消去のミクロとマクロを比較することによって、シナプスのスクラップビルドの細胞メカニズムを探る。 本年度は、"あらかじめハエに持たせておいた棒を離す”という条件刺激を、口吻へのショ糖水溶液の刺激(無条件刺激)による摂食行動に連合する条件反射の新規パラダイムを確立した(発表準備中)。そのパラダイムにおいて、一旦形成された記憶が次第に減衰していく記憶の消去過程を解析した。棒を離す刺激によっておこる摂食行動を継時的に観察するとともに、および、カルシウムイメージング法によってフィーディング・ニューロンの活動をモニターした。時間経過とともに次第に減衰していくことが観察された。この結果は、記憶の消去にともなう変化を追跡するための基礎データとして使用されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の進捗としては、"あらかじめハエに持たせておいた棒を離す”という条件刺激を、口吻へのショ糖水溶液の刺激(無条件刺激)による摂食行動に連合する条件反射の新規パラダイムを確立した(発表準備中)。そのパラダイムにおいて、一旦形成された記憶が次第に減衰していく記憶の消去過程を解析した。棒を離す刺激によっておこる摂食行動を継時的に観察するとともに、および、カルシウムイメージング法によってフィーディング・ニューロンの活動をモニターした。時間経過とともに減衰していくことが観察された。 以上の進捗は、研究計画に記載した内容に沿ったものであるので、自己点検により”おおむね順調に進展している”と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、この新規パラダイムにおいて、条件付け後に起きる忘却の過程を観察し、行動の変化に伴う細胞の変化をカルシウムイメージング法で観察する。さらに、条件刺激の連続や冷却によって記憶が消去される条件を解析し、記憶が失われる要因について詳細にしらべる。それらの場合のシナプスをリアルタイム観察することにより、記憶形成と消去の実態であるシナプスのスクラップビルドを、単一のフィーディング・ニューロンのデンドライト上で観察することが期待できる。 本研究では、組換えDNAを持つキイロショウジョウバエを実験に用いる。飼育及び実験はあらかじめ情報通信研究機構組換えDNA実験安全委員会により審査され承認を受けた所定のP1A実験室内で行う。今後も、研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(平成16年文部科学・環境省令第1号)、地域の条例、そして所属研究機関の審査部門が定める規程を遵守し、必要に応じて、同部門への申請、審査、承認のうえで実験を行う。
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