2019 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of extrinsic signals in the fate of neural progenitor cells in the developing neocortex
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
19H04769
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50431896)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 大脳新皮質 / 神経前駆細胞 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)リゾフォスファチジン酸による神経前駆細胞の運命制御 脳脊髄液由来のリゾフォスファチジン酸の神経分化に及ぼす影響を調べるため、脳脊髄液中のリゾフォスファチジン酸濃度が低い時期(脳発生初期)に、側脳室(脳脊髄液中)にリゾフォスファチジン酸を注入して濃度を人為的に増加したところ、神経前駆細胞の神経分化が亢進した。また、この際にリゾフォスファチジン酸受容体1(LPA受容体1)のアンタゴニストを同時に脳脊髄液中に導入すると、神経分化が亢進する作用が緩和された。このことから、脳脊髄液中のリゾフォスファチジン酸がLPA受容体1を介して、神経前駆細胞の分化を亢進していることが判明した。 (2)脳発生初期のマウス胎仔前脳のセロトニンの役割 脳発生初期にTryptophan Hydroxylaseの不可逆的な阻害剤(p-chloro-phenylaranine; pCPAなど)を妊娠マウスの母体に注入すると、母体の血中セロトニン量が低下し、これに伴って、胎仔前脳のセロトニン量が低下した。一方、母体の血中にセロトニンを投与すると、胎仔前脳のセロトニン量が顕著に増加した。このことから、脳発生初期のマウス胎仔前脳のセロトニンは母親由来であることが強く示唆された。また、母体の血中セロトニン量を低下した場合、胎仔の神経前駆細胞の数が減少した。これと同期して、神経前駆細胞の細胞周期が延長すること、神経分化が亢進することが判明した。このことから、母親由来のセロトニンは、胎仔の神経前駆最奥の自己複製を制御し、脳の正常発生に寄与することが推察できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、本研究計画を進める上での実験手法および実験条件等を確立することができた。さらに、研究計画していた、リゾフォスファチジン酸のgain-of-function実験を実施し、充分な成果が得られた。また、セロトニンに関する研究についても、実験条件を確立し、研究計画していた、セロトニンのloss-of-function実験を実施でき、充分な成果を得ることができた。これらのことを鑑みると、本研究は、当初計画に沿っておおむの順調に伸展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)培養した脳スライス(脳脊髄液の影響を排除できる実験系)にリゾフォスファチジン酸合成経路の阻害剤を添加して、皮質板神経細胞からのリゾフォスファチジン酸の分泌を抑制した場合に、神経前駆細胞の神経分化に及ぼす影響を精査する。これら実験結果を統合して、脳脊髄液および皮質板由来のリゾフォスファチジン酸が、発生時期のいずれのタイミングで作用して神経分化を促進するのか、明らかにできる。 (2)神経前駆細胞に発現するセロトニン受容体を同定する。一般的に、セロトニン受容体は7グループ(5HTR1~5HTR7)に大別され、総計14種類のサブタイプが存在する。グループ3のみがイオンチャンネル型であるが、神経前駆細胞には発現していない(Engel & van Hooft, Front Cell Neurosci 2013)。そこで、in situ hybridyzationおよび免(1)神経前駆細胞に発現するセロトニン受容体(GPCR型)を同定すると共に、その局在を明らかにする。さらに、同定した受容体の役割を明らかにするため、マウス胎仔脳の神経前駆細胞においてノックダウンし、神経前駆細胞の運命に及ぼす影響を精査する。また、マウス胎仔脳スライス等を用いて、セロトニンを培地に添加した場合などについて、神経前駆細胞の自己複製や神経分化に及ぼす効果を明らかにする。このようなloss-of-functionおよびgain-of-functionの解析を通して、発生時期に応じた母性セロトニン-セロトニン受容体シグナルの役割を明らかにする。
|
Research Products
(3 results)