2019 Fiscal Year Annual Research Report
Clock wave in gut peristalsis
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
19H04775
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 淑子 京都大学, 理学研究科, 教授 (10183857)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸 / 蠕動運動 / 振動波 / トリ胚 / 細胞内カルシウムイオン濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸神経系は「第2の脳」とも呼ばれ、複雑なネットワークを形成して多岐に渡る腸機能を制御する。中でも食べたものの消化吸収に欠かせない蠕動(ぜんどう)運動との関わりは深いと考えられている。蠕動運動とは、局所的に起こる腸の収縮が、その後「収縮の振動波」となって腸内を伝播する現象であり、まさに「時計機能」を有した高次生体システムである。しかしその時計を支える細胞機能の実体はほとんどわかっていない。本年度は、蠕動運動の時計機能とその成立機構を明らかにすべく、特に蠕動運動の発信源(起点)の成立機構に注目した解析を行った。独自に開発した蠕動運動可視化用カイモグラフィー法を用いて、ニワトリ胚の孵卵6日目から12日目にわたり、十二指腸から総排出口における蠕動運動起点の成立の様子を解析した。特に両方向に振動波を生じる起点(カイモグラフでは「へ」の字の頂点として表される)に注目した。その理由として、発生期においては、両方向に伝播する蠕動運動の方が一方向のものよりも圧倒的に出現頻度が高かったからである。結果、発生の進行に伴い、起点の出現頻度が上昇すると共に、起点の分布様式が変化した。10分間の観察とカイモグラフィー解析から、初期胚では起点はランダムに分布していたが、11日目胚になると、起点が生じる部位が固定化されていた。また、起点出現部位は、個体間でもほぼ類似していたことから、これらの部位決定にはなんらかの遺伝プログラムが働いていることが示唆された。腸全体を対象とした蠕動運動の起点分布の解析はこれが最初の例であり、新規知見が得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止にかかる大学ガイドラインのため、研究室での実験活動が制限されたため。特に蠕動運動における細胞内カルシウムイオン濃度の可視化技術の開発はこれまで前例がなく多くの条件検討を要するが、それらの活動の進展に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
蠕動運動における細胞内カルシウムイオン濃度の、GCaMPによる可視化技術の開発を続行する。GCaMPベクター(RCAS-GCaMP6s-P2A-mRuby3)は作製済みであるが、実際の胚内発現法ついてはさまざまな条件を検討し最適化する必要がある。また実際の可視化にあたり、胚内から取り出した腸を用いた顕微鏡技術の開発も並行して進める。
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