2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on regulatory mechanisms for fate specification timing in progenitor cells
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
19H04798
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時間制御 / 形態形成 / 細胞分化 / 転写制御 / 哺乳動物胚 / 細胞内局在 / BET / GRHL3 |
Outline of Annual Research Achievements |
発生過程において未分化細胞は、最初、多能性を持って増殖するが、あるタイミングで分化し、その後、細胞形態を変化させることで、形態形成運動を進行させる。本年度は、これらの時間的な制御機構を明らかにすることを目的に以下のように2点の研究を進め成果を得た。 ①マウス初期胚の割球は、内部細胞塊、エピブラストという多能性を持つ系譜と栄養外胚葉や原始内胚葉の細胞系譜へと分離するが、BETファミリータンパク質(BET)が多能性細胞系譜を維持する際に、STAT転写因子が関与することを示唆する結果が得られていた。そこで、今年度は、胚盤胞にBETの阻害剤、又はSTAT経路阻害剤を処理することで発現低下する遺伝子群を網羅的に同定した。その結果、STAT経路阻害剤で発現低下した遺伝子群の半数はBETの阻害剤でも低下した。その一方、BET阻害剤で低下した遺伝子の9割はSTAT経路の阻害剤では低下しなかった。更に、未分化性の維持に働く遺伝子はどちらの阻害剤でも発現が低下した。これらの結果から、STAT経路で未分化性維持に働く遺伝子は、BETを介して転写が活性化されていると示唆される。 ②核内転写因子であるGRHL3が細胞質へと局在を変えることで表皮分化から形態形成へというタイミングの制御機構を解明するため、GRHL3と相互作用する分子を同定し、その機能解析を進めた。今年度は、特異的抗体を用いてこのGRHL3を含む複合体を精製し、得られたタンパク質の質量分析を行うことで、GRHL3と相互作用する候補分子を複数同定した。得られた候補分子の発現を特異的な抗体を用いて解析したところ、MCF7細胞においてGRHL3と一部共局在していた。また、これらの候補遺伝子産物をノックダウンするとGRHL3タンパク質の細胞内局在が影響を受けた。これらの結果から、候補分子がGRHL3の細胞内での局在に関与することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初計画していた通りに、順調に計画は進められているため。BETとSTAT経路との関係については、網羅的な解析を通じて下流遺伝子がどの程度重複しているかなど明確に示すことに成功した。また、GRHL3タンパク質と相互作用する分子については、CRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトマウスを短時間で作製することにも成功しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
①現在までに、マウス胚盤胞においてBETの阻害剤、又はSTAT経路の阻害剤で処理することで発現低下した遺伝子をRNA-seq解析で、網羅的に同定している。今後、これらの結果をin situ hybridization法などで検証するとともに、どのような遺伝子群が共通に低下しているかなどより統計的・定量的な解析で明らかにする。更に、STAT3は、活性化されると二量体化され、リン酸化、アセチル化を経て、核内標的遺伝子に結合し、転写を活性化することが知られている。そこで、核内活性化型STAT3に対してBETファミリータンパク質がどのように働いているのか調べるため、STAT3とBETの細胞内局在などを詳細に解析する。以上から、BETが内部細胞塊の未分化性維持に関して、STAT3の標的下流遺伝子の転写をどのように制御しているのか明らかにする。 ②現在までに、GRHL3の細胞内局在を制御する分子が、未分化細胞から表皮細胞への分化、その後の細胞形態の変化を引き起こすタイミングを制御しているという仮説にたち、GRHL3と生化学的に相互作用する候補分子を免疫沈降法などによって同定している。今後、同定した候補分子の細胞内での局在について、ES細胞から分化させた表皮細胞で解析し、GRHL3と共局在が観察されるか、更にノックダウンすることで局在が影響をうけるかどうか検討する。更に、CRISPR/Cas9システムで候補遺伝子のノックアウトマウスを作製しており、本ホモ変異マウスにおいて、どのような表現型が観察されるか詳細に解析する。以上の解析から、候補分子を介して、核内で働く表皮細胞への分化から細胞質内で働くPCP経路に依存した形態変化への変換がどのようなメカニズムで制御されているのか明らかにする。
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