2019 Fiscal Year Annual Research Report
iNKT細胞の胸腺内分化運命決定とネオ・セルフ抗原の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
19H04800
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 元子 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (00345018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | iNKT細胞 / 細胞の運命決定 / TCRレパトア / CDR3 / 分化多様性 / 胸腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
iNKT細胞は、CD1d分子上に提示された糖脂質を認識するT細胞抗原受容体を有する細胞集団である。胸腺内で機能の異なる少なくとも3つのサブセット(NKT1、NKT2、NKT17細胞)へと分化し、それぞれが異なる免疫応答の局面で働くことが知られているが、各種iNKT細胞サブセットの分化運命決定機構はよく分かっていない。本研究では、iNKT細胞分化運命決定を担う‘ネオ・セルフ’としての糖脂質抗原の存在を念頭におき、その違いがもたらす結果(i.e.分化運命決定)のメカニズム解析を行っている。 令和元年度は、第一に、胸腺内における各iNKT細胞サブセットへの運命決定に関わる分子機構の解明を目指した解析を行った。NKT1, NKT2, NKT17細胞各サブセットを用いたTCRレパトア解析を行い、各NKT細胞サブセットが有するTCRα鎖は、CDR3領域のアミノ酸配列を含め、95%以上が全く同一のものを用いていることを明らかにした。一方、TCRβ鎖は非常に多様性が大きく、iNKT細胞各サブセットを規定するような「特有配列」は存在しないことがわかった。 第二に、遺伝的背景の違いがiNKT細胞分化多様性に与える影響について解析を行った。C57BL/6マウスはNKT1細胞が優位であり、BALB/cマウスはNKT2細胞優位であり、このような遺伝的背景の異なるマウス間で見られるNKT細胞サブセットの多様性を分化多様性と呼ぶ。令和元年度の研究結果より、iNKT細胞の分化多様性は、胸腺上皮細胞の遺伝的背景には影響を受けず、骨髄細胞の遺伝的背景に依存することを明らかにした。さらに、BALB/cの骨髄由来の細胞(主にCD4+CD8+ダブルポジティブ細胞)の発現する細胞表面分子が、NKT2細胞優位な表現形に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、胸腺内における各iNKT細胞サブセットへの運命決定に関わる分子機構の解明を目指して各種実験を行った。 第一に、NKT1, NKT2, NKT17細胞各サブセット、並びにCD4T細胞, CD8T細胞のTCRレパトア解析を行い、比較検討を行った。各NKT細胞サブセットが有するTCRα鎖は、CDR3領域のアミノ酸配列を含め、95%以上が全く同一のものを用いていた。1アミノ酸のみが違うものを含めると99%以上が同一の配列を用いていた。一方、TCRβ鎖は非常に多様性が大きく、iNKT細胞各サブセットを規定するような「特有配列」は存在しないことがわかった。 第二に、遺伝的背景の違いがiNKT細胞分化多様性に与える影響について解析を行った。C57BL/6マウスはNKT1細胞が優位であり、BALB/cマウスはNKT2細胞優位であり、このような遺伝的背景の異なるマウス間で見られるNKT細胞サブセットの多様性を分化多様性と呼ぶ。令和元年度は、C57BL/6マウスもしくはBALB/cマウスの骨髄細胞を、BALB/cマウスもしくはC57BL/6マウスへ移入した骨髄キメラマウスを作製し、iNKT細胞の分化多様性は、ホスト(胸腺上皮細胞)の遺伝的背景には影響を受けず、骨髄細胞の遺伝的背景に依存することを明らかにした。さらに、BALB/cの骨髄由来の細胞(主にCD4+CD8+ダブルポジティブ細胞)の発現する細胞表面分子が、NKT2細胞優位な表現形に重要であることが明らかとなった。そしてC57BL/6とBALB/cマウスの胸腺細胞を用いたRNA-Seq解析を行い、遺伝的背景の違いによって発現量に違いが見られる膜タンパク質や細胞内シグナル伝達分子の候補分子の同定に成功した。 以上の結果より、現在までの研究の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に得られた実験結果の確認実験をまずは進める。また令和元年度に同定した、遺伝的背景の違いによって発現量に違いがみられる膜タンパク質や細胞内シグナル伝達分子の候補分子について、さらなる解析を進めていく予定である。具体的には、C57BL/6やBALB/cマウス以外の遺伝的背景の異なるマウス(C3H, DBA/2, FVBなど)を用いて、候補分子の発現量と分化多様性に相関が見られるか解析する。さらには候補分子の発現量を変えることで(過剰発現させるなどして)、その発現量が分化多様性にどのように影響を及ぼすかを明らかにする。これらの解析を通して、iNKT細胞の分化多様性の分子機構と、iNKT細胞サブセットの運命決定機構について、新規の分子機構を明らかにする。 また胸腺に存在する各種iNKT細胞に関する解析も進める。第一に、未成熟な状態で末梢組織へ移動するiNKT細胞の機能と役割を明らかにする。第二に、胸腺常在性のiNKT細胞の機能と役割の解明を行う。これらの解析を通し、胸腺で分化成熟する各種iNKT細胞のサブセットの実態と、生体における役割を明らかにする。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] CD69 Biology and Pathology2020
Author(s)
Kimura M.Y., Koyama-Nasu, R., Mita Y., Hayashizaki, K. and Nakayama T.
Organizer
11th International Symposium of IFReC, Immunology at the Forefront
Int'l Joint Research / Invited
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