2019 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞レパトア選択における胸腺ネオ・セルフ抗原の意義
Publicly Offered Research
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
19H04802
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新田 剛 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (30373343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞 / 胸腺上皮細胞 / MHC / 抗原ペプチド / 遺伝子多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞の抗原認識レパトアは、胸腺内に提示された自己ペプチドの認識にもとづく正と負の選択を通して形成される。胸腺の皮質では、皮質上皮細胞に特異的に発現する胸腺プロテアソームとリソソームプロテアーゼによって生成される自己ペプチドが、T細胞の正の選択に重要である。これらのペプチドは他の体細胞には存在しないため、いわば「非自己」としての性質を有するが、これらが正の選択を制御する分子基盤は未だ明らかになっていない。 本研究では、(1)胸腺特異的プロテアーゼの多様性が「ネオ・セルフ」ペプチドの生成を介してT細胞レパトア選択と疾患感受性を決定づけるという概念の確立をめざす。また、(2)なぜ胸腺の皮質には「非自己」ペプチドが生成される必要があるのか、その意義を明らかにし、T細胞の抗原認識レパトアを生み出す原理の解明に挑戦する。 (1)については、胸腺特異的リソソームプロテアーゼTSSP (PRSS16)の高頻度変異(S103I)およびフレームシフト変異を導入したマウスを作製し、胸腺上皮細胞と胸腺T細胞の分化への影響を解析した。これらのマウスから胸腺のCD4SP細胞およびTreg細胞を単離し、TCRレパトア解析の準備を進めている。(2)については、b5t欠損マウスでのCD8 T細胞のTCRレパトア変化を同定し、b5tによるCD8T細胞生成の制御には負の選択が関与しないことを明らかにした。さらに、正の選択に重要なTCR CDR3領域のアミノ酸残基を特定し、正の選択を誘導するペプチドモチーフを予測する試みを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトTSSP (PRSS16)遺伝子に高頻度に存在するdamaging variationについて、CRISPR/Cas9 法を用いて変異マウスを作製した。胸腺上皮細胞の分化、およびT細胞の分化に異常はみられなかった。CD4 T 細胞のTCR レパトアへの影響を定量的に解析するため、特定のTCRb鎖を発現させたレトロジェニックマウスを作製し、胸腺のCD4SP細胞およびTreg細胞を単離した。次世代シーケンスを用いたTCRa鎖の網羅的配列決定の準備を進めている。 また、b5t欠損マウスを用いてTCRbレトロジェニックマウスを作製し、CD8 T細胞のTCRレパトア解析を実施した。b5t欠損マウスではおよそ半分のTCRクローンが失われることが明らかになった。b5t欠損によって低下したCD8T細胞数は、負の選択の制御因子Bimを欠損させることによって回復した。しかし、TCRレパトア解析の結果、Bimの欠損はb5t欠損下で失われたTCRレパトアを回復させないことが明らかになった。従って、b5tによって生成される自己ペプチドはCD8 T細胞の正の選択を誘導するものであり、この過程に負の選択は関与しないことが示唆された。 以上のように、遺伝子改変マウスの作製とTCRレパトアデータの取得について、当初計画通りに順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Prss16変異マウスについて、CD4 T細胞およびTreg細胞のTCRレパトア解析を進める。 b5t欠損マウスについては、b5t依存的または非依存的TCRをクローニングしてTCRa/b鎖のレトロジェニックマウスを作製し、TCRレパトア解析の精度検証を行う。また、b5t欠損マウスのTCRレパトアデータから、正の選択に重要なTCR CDR3領域のアミノ酸残基を特定する。それらのCDR3の立体構造にもとづき、正の選択を誘導するペプチドモチーフを予測する。
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Research Products
(10 results)