2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト免疫細胞と再生組織を用いた自己免疫疾患モデルの樹立
Publicly Offered Research
Project Area | Creation, function and structure of neo-self |
Project/Area Number |
19H04807
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河本 宏 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (00343228)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患発症モデル / NOGマウス / NOG-dKOマウス / PBMC / 制御性T細胞 / アロ反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、ヒトの自己免疫疾患発症モデルの樹立を目指す。ヒトの自己免疫疾患モデルは、現時点では存在しない。 NOGマウスのような免疫不全マウスにヒト造血幹細胞を移植して作るいわゆる「ヒト化マウス」は、自己免疫疾患研究に用いられるレベルでない。またNOGマウスにヒト末梢血単核球(PBMC)を輸注すると異種に対する強い移植片対宿主病(GVHD)が起こるので、これもモデルとして使えない。一方、NOG-dKOマウス(MHCクラスIとクラスIIを欠損したNOGマウス)にヒトのPBMCを移植してもGVHDが起こらないことが最近知られるようになった。本研究では、このマウスを用いて、健常人ドナーからのPBMCと、同ドナー由来のiPS細胞から再生した各種組織を、NOG-dKOマウスに構築する。PBMCを輸注する際、制御性T細胞を除去しておくことにより自己免疫反応を誘発する。 2019年度は、まずこの系で免疫反応が検出できるかどうかを測定した。そのために、まずHLA不一致細胞に対する拒絶反応(アロ反応)が検出できるかどうかを調べた。健常人ボランティアドナーAから樹立したBリンパ芽球様細胞株(LCL)を標的細胞として用いた。生体イメージングシステム(IVIS)を用いて拒絶反応を検出するために、LCLにルシフェラーゼ遺伝子を導入した。別な健常人ボランティアドナーBからPBMCを調整した。HLAをタイピングして、ドナーAとはHLAが完全に不一致のドナーBを選んだ。ドナーAからのLCLを腹腔内投与し、1週間後に生着が確認されたマウスに、一匹あたりドナーB由来のPBMCを尾静脈から輸注した。IVISを用いてLCLの増減を測定したところ、10日頃から減り始め、20日目にはほぼ消失した。以上の実験結果から、予定通りアロ反応は検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の手順で、アロの系で免疫反応が検出できるか検証した。 1)健常人ボランティアドナーAから樹立したBリンパ芽球様細胞株(LCL)を標的細胞として用いた。 2)生体イメージングシステム(IVIS)を用いて拒絶反応を検出するために、LCLにルシフェラーゼ遺伝子を導入した。 3)別な健常人ボランティアドナーBからPBMCを調整した。HLAをタイピングして、ドナーAとはHLAが完全に不一致のドナーBを選んだ。100mlから108個のPBMCが調整できる。 4)ドナーAからのLCL106個を腹腔内投与し、1週間後に生着が確認されたマウスに、一匹あたりドナーB由来の107個のPBMCを尾静脈から輸注した。 5)IVISを用いてLCLの増減を測定した。10日頃から減り始め、20日目にはほぼ消失した。 6)以上の実験結果から、予定通りアロ反応は検出できた一方、予想以上に進展した訳ではないので、「②おおむね順調に進展している」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
概要:昨年度に引き続き、まずアロの系で免疫反応が検出できるか検証する。また、年度の後半ではオートの系で検証する。 計画:1)ドナーの選定 健常人ボランティアドナーAからは、すでにiPS細胞が作成済みである。 2)奇形腫の形成 奇形腫を形成させるのには時間がかかるため、実験予定の約2ヶ月前に、iPS細胞2x106個をマウスの皮下に播種する。 3)PBMCの調整 別な健常人ボランティアドナーBからPBMCを調整する。HLAをタイピングして、できる限りドナーAとはHLAが不一致の度合いが大きいドナーを選ぶ。100mlから108個のPBMCが調整できる。コントロールのために、ドナーAからもPBMCを調整する。 4)PBMCの輸注 一匹あたり107個のPBMCを尾静脈から輸注する。ドナーAからのPBMC、ドナーBからのPBMCさらに組織障害に対するコントロールとしてPBS投与群も置く(自己組織に自己反応性T細胞が浸潤して傷害する可能性があるため)。 5)マウス末梢血の解析 最初の実験では8週間経過を観察する。マウスの末梢血は毎週採血し、フローサイトメトリーでヘルパーT細胞、キラーT細胞、NK細胞、B細胞分画、T細胞に関してはナイーブ/エフェクタ/メモリー分画の推移をみる。 6)組織中に浸潤したリンパ球の解析 8週後にマウスをsacrificeし、脾臓、骨髄、再生血管内皮組織あるいは奇形腫を取り出す。半分は固定して凍結切片を作って免疫組織染色を行う。半分からは免疫細胞を分取し、フローサイトメトリーで(7)と同様の解析を行う。 7)1-6 と同様の実験を健常人ボランティアドナーAのPBMCで行う。健常人ボランティアドナーAのPBMCについては、制御性T細胞を除去した群とそうでない群を用いる。
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