2019 Fiscal Year Annual Research Report
モデル生物アカパンカビを利用したウイルス・宿主の相利共生と環境適応の関係解明
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
19H04828
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
本田 信治 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (90632167)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アカパンカビ / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌を代表するモデル生物であるアカパンカビはこれまでウイルス感染の報告はなかった。本研究グループはアカパンカビ野生株の公共RNA-seqデータを利用し、Fusarivirus(NcFV1)やPartitivirus(NcPV1)などの新規ウイルスを検出し、DNAシークエンスにより両者の全長配列を決定した。次に、アカパンカビ標準株にNcFV1とNcPV1を感染させ、その表現型が無病徴であること、そして、両ウイルスが生殖期後の子に垂直伝播しないことを確認した。本研究では、アカパンカビが生存に不利な環境(低栄養、低温、低酸素)になると生殖期に移ることから、これらの野生株から同定した新規ウイルスは宿主と相利共生し、地域環境の適応に貢献したという仮説を立て、その証明を行っている。まず、ウイルス感染株と非感染株間の2群間比較解析を行い、ウイルス感染時に発現が顕著に増大する遺伝子群を選抜した。そして、これらの遺伝子群とウイルス感染時の無病徴性の関係を調べるため、網羅的にKO株にウイルスを感染させて、その表現型解析を行うことにより、新規ウイルス防御因子virus response factor-1(vrf-1)の同定に成功した。このvrf-1欠損株の特徴として、ウイルス非感染時は正常株とまったく変わらないが、ウイルスに感染すると他のウイルス感染KO株よりも著しく生育が阻害される。更に、このvrf-1はアカパンカビ種にしか保存されておらず、実際の転写産物がコンピューターで予測されたアノテーションとは大きくずれ、他の既知遺伝子群とは異なる転写制御であることがわかった。これらの結果から、この特殊なvrf-1遺伝子の獲得がアカパンカビとウイルスの相利共生に大きく関わっていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題の要である「ウイルス・宿主の相利共生と環境適応の関係」を担うアカパンカビ種のみに保存された新規ウイルス防御因子vrf-1を同定し、その解析研究が順調に進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
アカパンカビに自然感染する新規ウイルスNcFV1と宿主アカパンカビの新規ウイルス防御因子VRF-1の関係を調べるために、アミノ酸配列情報から必要な機能部位を抽出する。次に、in vivo系でウイルス因子にFLAGタグを付加し、アフィニティー精製・質量分析により、相互作用する因子を同定する。具体的には、本申請者が開発した蛋白質をタグ化する手法(Honda & Selker, Genetics, 2009)と、シクロスポリンと結合すると細胞死を誘導する内在遺伝子csr-1と目的遺伝子を置き換えることで、シクロスポリン耐性になる導入法(Bardiya & Shiu, FGB, 2007)を組み合わせる。もし、新たな因子の同定に成功した場合は、酵母Two-Hybrid法により相互作用の最少ドメインを決定する。
|