2019 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスと内在性ウイルス様エレメントの探索による現代と太古のウイルス多様性の理解
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
19H04833
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 真行 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (20725981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウイルスメタゲノム / ウイルス叢 / ヴァイローム / デルタウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は種々の検体およびデータベースにおいて公開されているRNA-seqデータを利用して、ウイルスメタゲノム解析を行い、網羅的なウイルス検出を行った。哺乳動物と鳥類のRNA-seqデータベースの探索を行った結果、多数の新規ウイルス(ここでは既知のウイルスとアミノ酸配列が一致率が95%未満のものを新規ウイルスと定義した)を検出することに成功した。検出したウイルスはRNAウイルスのみならず、DNAウイルスも検出できた。 上記の検出した新規ウイルスの中から、デルタウイルスと呼ばれるウイルスに着目してさらなる研究を行った。デルタウイルスは一本鎖環状RNAをゲノムとして持ち、自身だけではウイルス粒子を形成できず、ウイルス粒子形成にはヘルパーウイルスと呼ばれる別のウイルスの助けを必要とする特殊なウイルスであり、そのウイルスの進化については謎な部分が多い。本研究では、ウッドチャック、オジロシカ、キンカチョウから新規デルタウイルスを検出した。さらにデータベースを詳細に探索したところ、これらのウイルスのうち、すくなくともウッドチャックとキンカチョウのデルタウイルスは複数の別の時期に採材された個体から検出され、自然界においてこれらのウイルスが個体間において伝播しているということが示唆された。さらに分子系統解析によってデルタウイルスの系統樹のトポロジーは宿主生物の系統樹のトポロジーとは一致しない部分が多く、デルタウイルスの進化の過程おいて異種間伝播が起こったことが示唆された。本研究において得られた知見は、極めて特殊なウイルスであるデルタウイルスの進化の一端を明らかにし、ウイルスの多様性および共進化について新たな知見を提供する。 また脊椎動物ゲノムに存在するボルナウイルス由来の遺伝子配列を網羅的に検出し、古代のボルナウイルス感染を明らかにするための基礎的な情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特にデータベース検索におけるウイルス探索では想定以上に新規ウイルスを検出することができ、当初の計画を大幅に上回るペースで研究を展開できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、検出した新規デルタウイルスについて実際の個体からの検出を試み、さらにはヘルパーウイルスの探索を行う。またその他の新規ウイルスについても種々の解析を行い、ウイルスの性質を明らかにする。 古代のウイルスについては、検出したボルナウイルス由来の遺伝子配列の詳細な解析を行い、存在年代や宿主等を明らかにする。
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