2019 Fiscal Year Annual Research Report
コウモリを自然宿主とするRNAウイルスにおける宿主適応機序の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
19H04835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (90324847)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レオウイルス / コウモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
自然宿主体内で、ウイルスはその複製を制御し、共生することで感染環を維持している。しかし、自然宿主-ウイルス共生機構は不明な点が多い。ネルソンベイレオウイルス(NBV)p17タンパク質はコウモリ細胞において、NBV FASTタンパク質の細胞融合活性を促進することで特異的に複製能を制御することが示唆されている。本研究では、NBV p17およびFASTタンパク質の複製制御機構を解明することで、コウモリ種とウイルスとの共生機構に関する知見の蓄積を目的とする。本年度は以下の研究成果が得られた。 1. NBV p17と相互作用する宿主因子の探索 p17はコウモリ細胞において、NBV複製に重要な宿主因子の発現を誘導あるいは抑制することで、複製を制御している可能性が推察される。そのため、cDNAライブラリーを用いた発現クローニング、p17によって発現変動するコウモリ細胞転写産物の定量法(RNA-Seq法)により、p17に相互作用する宿主因子のスクリーニングを行った。現在、得られた候補因子について解析を行っている。 2. NBV p17によるFASTの機能活性化機序の解明 ウイルスライフサイクルにおけるp17およびFASTの相互作用意義を理解するため、p17およびFASTの両方を欠損した組換えウイルスを作製し、p17およびFAST発現ベクターを用いてcomplementation assayを行った。その結果、コウモリ細胞において、p17およびFASTは相互作用することにより、複製制御に関与していることが明らかとなった。また、トリレオウイルス由来p17はコウモリ細胞において、FASTの機能を活性化することはできなかった。以上の成果は、p17の種特異的複製制御機構を理解する上で有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NBV p17と相互作用する宿主因子の探索研究ならびにNBV p17によるFASTの機能活性化機序の解明に関する研究において、有用な成果が得られたことから研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ネルソンベイレオウイルス(NBV)p17と相互作用する宿主因子の同定 前年度に引き続き、組換えタンパク質によるアフィニティー精製法、cDNAライブラリーを用いた発現クローニング法、p17によって発現変動するコウモリ細胞転写産物の定量法(RNA-Seq法)、CRISPR-Cas9系sgRNAライブラリーによるスクリーニング法などの手法を用いて、p17に相互作用する宿主因子の同定研究を行う。 2.NBV p17による複製制御機構の解明 NBV p17はNBV FASTの細胞融合活性を促進することで特異的に複製能を制御する。NBVと同じレオウイルス科Fusogenicグループのウイルス由来p17およびFASTをクローニングし、コウモリ細胞における特異的な複製制御活性やp17とFASTの相互作用機序を明らかにする。
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