2019 Fiscal Year Annual Research Report
鳥インフルエンザウイルスと鳥類との共生に関わる細胞内因子・遺伝子制御機構の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-virology: the raison d'etre of viruses |
Project/Area Number |
19H04841
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
渡邊 洋平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50452462)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鳥インフルエンザウイルス / 共生 / 進化 / 細胞因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥インフルエンザウイルスと水禽類との共生メカニズムは不明である。本研究では、ヒト適応変異であるPB2-627Kを野外で維持しつつ特異に進化を続ける中東域の鳥インフルエンザウイルスと鳥類との関係性を「亜共生」と位置づけ、典型的なアジア域の鳥インフルエンザウイルス(「共生」ウイルス)と異なる進化動態にあると仮設を立てて研究を展開する。「共生」および「亜共生」ウイルス間には、鳥細胞機能の利用や相互作用の様式に相違があると想定される。 本研究の目的は、「共生」ウイルスと「亜共生」ウイルスが鳥細胞での複製動態において相互作用または利用する遺伝子制御機構や細胞機能の差異を免疫沈降法やトランスクリプトーム解析により検知することを糸口として、鳥インフルエンザウイルスと水禽類との共生メカニズムを明らかにすることである。 本年度においては、ウイルスポリメラーゼに直接結合する鳥細胞因子群を同定した。これらの因子群がウイルス複製に与える効果をsiRNAを用いたノックダウン細胞を用いて評価することを検討したが、ノックダウン効率が低いため、CRISPER-Casシステムを用いて標的因子をノックアウトした細胞を現在樹立中である。またウイルスポリメラーゼに結合しないが共生に関わる遺伝子制御機を探索するために、幾つかのウイルス群を設定して感染鳥細胞における細胞遺伝子発現をCage-seq法を利用したトランスクリプトーム解析によって評価した。その結果、現在までに発現量が異なる極めて多様な遺伝子を検知できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中東域の鳥インフルエンザウイルス(「亜共生ウイルス」)とアジア域のウイルス(「共生」ウイルス)群間において、鳥細胞機能の利用やウイルス-宿主因子との相互作用における差異を①ウイルスポリメラーゼに直接結合することで共生に関わる因子と②ウイルスポリメラーゼに結合しないが共生に関わる遺伝子制御機構に分けて検知できた。 ①については、ポリメラーゼ複合体に特異的に結合する鳥細胞因子を同定した。②については、群間で遺伝子発現が異なる多様な遺伝子を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスポリメラーゼに直接結合する鳥細胞因子については、CRISPER-Casシステムによって標的細胞をノックアウトした細胞株を樹立中であるため、樹立次第、ウイルス複製に与える影響を評価する。 ウイルスポリメラーゼに結合しないが共生に関わる遺伝子制御機構については、Cag-seq法によって極めて多様な遺伝子が検知できたため、今後どのように候補遺伝子を対象とした解析を実施するかが重要である。一義的には、著しく異なる発現動態を示す特定の遺伝子に着目して解析を実施するが、特定の遺伝子発現のみでウイルス複製に与える影響が明らかとならない場合には、遺伝子発現を全体として捉えてパスウェイ解析などに切り替えることで、ウイルス群間で細胞との相互作用に何が異なるのか解析を試みる。
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