2019 Fiscal Year Annual Research Report
重複受精を制御する因子間相互作用の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Determining the principles of the birth of new plant species: molecular elucidation of the lock-and-key systems in sexual reproduction |
Project/Area Number |
19H04852
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井川 智子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (00360488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重複受精 / 配偶子相互作用 / DMP9 / GCS1 |
Outline of Annual Research Achievements |
重複受精は、2 つの精細胞がそれぞれ卵細胞または中央細胞と受精する、被子植物特有の生殖様式である。重複受精を導く、雌雄配偶子間での相互作用を正確に進行させるタンパク質が近年同定されてきている。申請者はこれまでに、精細胞膜局在型のDMP9 が雌性配偶子との認証に関与する新規重複受精因子であることを報告している。DMP9の同定により、雌雄配偶子間の相互作用(認識:DMP9、接着:GEX2、細胞膜融合:GCS1)にそれぞれ関与する因子が明らかになった。各因子の関係性を含めつつ、受精因子の機能追究を行った。 2019年度はまずDMP9 の機能領域解析を進めた。複数パターンのデリーション解析によって、受精に必要される領域の解析を進めた。 GCS1は重複受精反応の最終ステップである細胞膜融合に関わるが、dmp9変異精細胞は卵細胞とのみ受精できない。GCS1は重複受精時に、細胞内の内膜系から原形質膜に局在を移すと考えられている。この現象を検証するために、dmp9精細胞中のGCS1のイメージングを行うための、マーカーラインの作製と受精観察を進めた。 GCS1はシロイヌナズナにおいて1コピーの絶対的な受精因子(欠損すると重複受精阻害を示す)である。しかしGCS1のパートナー分子を含めて、雌性配偶子で機能する受精因子は未だ同定されていない。GCS1と相互作用する新規の因子探索を目的として、プロテオーム解析を進めた。 GCS1が最終的に機能するためには、それ以前のステップで機能するDMP9及びGEX2との連携が重要と考えられるため、受精機能における関係性を評価するためのマーカーラインの作出を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請研究計画に沿い、研究を進めている。まず、DMP9 の機能領域解析を進めた。DMP9は4つの膜貫通領域(TM)を持つが、今年度の解析でN末側2つのTM、C末側2つのTMを除いたDMP9の発現解析を行い、どちらも精細胞膜局在に必須であることが判明した。 GCS1は重複受精反応の最終ステップである細胞膜融合に関わるが、dmp9変異精細胞は卵細胞とのみ受精できない。GCS1は重複受精時に、細胞内の内膜系から原形質膜に局在を移すと考えられている。この現象を検証するために、dmp9精細胞中のGCS1のイメージングを行うマーカーラインを作製し、観察を行った結果、卵細胞との受精が起こらないdmp9精細胞の原形質膜にGCS1が局在する様子が観察されている。さらに解析を進めるため、GCS1の局在変化を検出できるマーカーラインもほぼ完成しつつある。 GCS1はシロイヌナズナにおいて1コピーの絶対的な受精因子(欠損すると重複受精阻害を示す)である。GCS1と相互作用する新規の因子探索を目的として、分泌型のGCS1を卵細胞で合成させて、卵細胞上の推定受精因子と拮抗的に結合させる組換え体を作出した。その結果、期待通り受精が阻害される表現型が確認されたため、この組換え体を材料にプロテオーム解析を行った。 また、GCS1とGEX2、DMP9との関係性を解析するためのマーカーラインの作製を進めた。 以上のように、設定した研究計画に沿って進行できている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
DMP9の機能領域解析に関しては、推定非構造領域に着目して、発現解析を進める。最終的に相補実験データも追加して、受精領域の決定を行う。 精細胞内GCS1のイメージング解析に関しては、再現性の確認も含めてより高解像度の画像データの蓄積を行う。また、完成しつつあるGCS1局在検出マーカーラインを用いて、処理刺激を与えたとき精細胞内のGCS1局在変化を追究する。 GCS1の相互作用因子の捕捉を狙ったプロテオーム解析結果について、候補因子の選定を行い、機能解析を進める。変異体が存在しない場合はゲノム編集によりノックアウト体を作出し、逆遺伝学解析によって受精における機能検証を行う。 GCS1とGEX2、DMP9との関係性を解析するためのマーカーラインは継続して進める。受精における表現型を観察し、統計データにまとめ、重複受精における作用機序を明らかにする。 以上のように、今後は、現在行っている研究をさらに進めることで、科学的なエビデンスデータを蓄積していく。得られる成果については随時関連の学会で発表する。また、国際誌で学術論文を発表して、社会への発信を行う。
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