2019 Fiscal Year Annual Research Report
思春期の主体価値形成支援法の確立に向けた疫学・臨床心理学の連携的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Science of personalized value development through adolescence: integration of brain, real-world, and life-course approaches |
Project/Area Number |
19H04881
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 史 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80608026)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 主体価値 / 思春期 / 学校 / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、主体価値形成を促進する認知行動療法の内容を決定し、介入による改善が見込まれる心理社会的困難を特定することを目的とした。公立小中学校4校において、通常授業時間を利用した学級ベースの認知行動療法を実施し、一次アウトカム変数(行動問題)および二次アウトカム変数(主体価値、感情調整)に対する介入効果を検証した。申請者のこれまでの研究では、いずれの変数も介入前と介入後の二時点においてのみ測定しており、因果関係を構成する要素のひとつである「時間的前後関係」については検証できていなかった。そこで、2019年度は、介入中にも測定を加え、「主体価値の変化が行動問題の変化に先行する」という時間的前後関係を明らかにすることで、本研究の目的達成を図ることとした。 第一に、申請者が過去に実施してきた研究の追試的検証として、介入による一次アウトカム変数の改善有無を検証した。その結果、これまでの研究と同様に、介入に参加した小中学生は、参加しなかった小中学生よりも、衝動性・不注意の問題が減少し、情緒の問題も改善する傾向を示した。さらに、2019年度の目標(主体価値の改善に寄与する変数を同定する)に照らし合わせてアウトカム変数同士の連動性を検証した。その結果、主体価値の改善と感情調整の改善は一方向ではなく相互影響関係にあり、それらの改善は行動問題の改善に先行するというモデルが支持された。サンプル数の少なさから安定的な解析結果が得られたとは言い難いものの、今後の研究および教育実践の発展につながる可能性を有した重要な予備的知見を得たといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は東京ティーンコホートのデータ解析を通して主体価値に影響する要因の抽出を計画していたものの、研究参加希望校が予定よりも多く、介入研究ができる学校数が増えることは来年度の本研究計画の質の向上につながると考えられたため、介入研究実施の地域基盤の構築に予定以上の労力を注いだ。そのため、東京ティーンコホートのデータ使用申請時期が遅くなり、解析に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い学校での活動には一定の制限がかかるものの、2019年度の研究実施地域基盤構築の成果もあってか、2020年度も予定どおりに研究実施ができる状態にある。感染症予防に関連する情勢に応じて今後の予定変更の可能性はあるものの、2020年度の計画については当初予定通りに遂行する。また、2019年度に予定していたデータ解析についても、同時進行でデータ使用申請・解析を進めていく。この点については、感染症予防の情勢とはおおむね無関係に進められるものと思われる。
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