2020 Fiscal Year Annual Research Report
VMAT1変異が精神的個性に及ぼす影響:マルチスケールアプローチによる解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
19H04892
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河田 雅圭 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90204734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | VMAT1 / 個性の進化 / 小胞モノアミントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはこれまで、小胞モノアミントランスポーター1(VMAT1)遺伝子において、ヒト系統特異的に出現したアミノ酸置換(136Asn→Thr/Ile)が自然選択を受けてきたことを示した。また、培養細胞を用いたVMAT1タンパク質の機能解析により、この置換がVMAT1の神経伝達物質の取り込み能力に影響することを示している。一方で、ヒト特異的なVMAT1遺伝子変異が関連遺伝子群の発現や脳内の神経活動、そして個体の行動に与える包括的な影響は不明であった。これらを解明するため、本研究では当該の1アミノ酸置換を施した遺伝子編集マウスを作製し、網羅的な行動バッテリーテスト、関連脳部位における脳波測定、および関連遺伝子の脳内発現量測定を実施した。 行動実験の結果、136Ile型マウスは野生型(Asn型)あるいはThr型マウスに比べて、不安様行動が少ないほか、社会性行動に変化が見られた。また、高架式十字迷路試験を実行中のマウスの脳内に電極を挿入し、開放・閉鎖アーム滞在時における神経活動を測定した。不安傾向に差が見られたことをふまえ、背内側前頭前皮質および扁桃体の神経活動に着目したところ、他の遺伝子型に比べて、136Ile型マウスは扁桃体の神経活動に違いが見られた。さらに、各遺伝子型4個体の前頭前皮質、扁桃体、線条体を用いて、網羅的な遺伝子発現解析(RNA-seq)を行なった。その結果、136Ile型マウスは野生型マウスに比べて、扁桃体において神経伝達に関わる遺伝子群の発現が低下していることが明らかとなった。これらの結果は、これまで中枢神経系での役割があまり解明されていなかったVMAT1遺伝子の作用機序を新たに示す研究成果であるといえる。また、人類進化の観点からも、VMAT1遺伝子がヒトの情動進化に果たした役割を実験的に明らかにした重要な成果であると考えられる。
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Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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