2019 Fiscal Year Annual Research Report
How to modulate individuality
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
19H04895
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金子 涼輔 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40390695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロトカドヘリン / ノックインマウス / 遺伝子発現制御 / 神経回路形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
仮説「Pcdh発現の変動が個性を変える」検証のため以下3課題を行った。 a)Pcdh発現変動の測定:今年度は新たなPcdh発現可視化マウスが完成した。これまでに完成していたβ3およびβ19-RFPマウスに加えて、γA3-GFPマウスおよびβ15-GFP-CreERマウスが得られた。これらPcdh発現可視化マウスの脳切片を作成し、蛍光顕微鏡にて観察した結果、Pcdh-γA3あるいはPcdh-β15の発現パターンに類似した空間的配置でGFP陽性細胞が観察された。本結果は、これらのマウスを用いることで脳内におけるPcdh-γA3ならびにPcdh-β15発現を高感度かつ簡便に測定可能なことを示唆する。 b)Pcdh発現の変動メカニズム解析:Pcdh発現制御メカニズムを解明するため、Pcdh-β3発現と相関するエピゲノム修飾の同定を進めた。Pcdh-β3発現可視化マウス胎児脳より調製した細胞分散液よりRFP陽性細胞(=Pcdh-β3発現細胞)をセルソーターにて分取し、本細胞のDNAメチル化状態を解析した結果、Pcdh-β3プロモーター内部において、Pcdh-β3発現と相関するDNAメチル化部位を同定した。本部位の機能解析のため、ゲノム編集法を用いて本DNAメチル化部位を改変した遺伝子改変マウスを作製した。 c)Pcdh発現変動と個性変化との因果関係解析:今年度は胎児期および幼児期マウスへのストレス負荷によるPcdh発現変化を調べた。既知のPcdh発現変化条件(胎児期アルコール投与、母子乖離)を検討したものの、Pcdh発現の大きな変化は見られなかった。本結果は、Pcdh発現はこれらの条件に対してロバストな発現調節をされていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに以下のごとく進捗している。 a)Pcdh発現変動の測定:今年度までに計4種類のPcdh発現可視化マウスが完成した。すなわち、β3-RFPマウス、β19-RFPマウス、γA3-GFPマウスおよびβ15-GFP-CreERマウスである。これらにより、Pcdh-βならびにPcdh-γの発現を高感度かつ簡便に測定可能となった。さらに、現在はPcdh-αのうちの1種、Pcdh-α2の発現可視化マウス作製を進めている。現在までに全Pcdh-αの発現をRFPにて可視化することに成功している。本マウスのPcdh-α2遺伝子座を改変し、Pcdh-α2の発現を可視化するためのゲノム編集のデザインが完了した。 b)Pcdh発現の変動メカニズム解析:今年度までにPcdh発現制御に関わることが予想されるエピゲノム修飾を一つ同定できている。すなわち、Pcdh-β3発現と逆相関するDNAメチル化部位である。これまでに本部位のPcdh発現制御能を検討するための遺伝子改変マウスが作製できた。さらに、Pcdh発現制御に関わるヒストン修飾の同定も進めている。具体的には、クロマチン免疫沈降法を用いてPcdh発現と相関するヒストン修飾を同定するための実験条件が確立できた。 c)Pcdh発現変動と個性変化との因果関係解析:これまでに、成体期の通常飼育条件において週~月レベルの長い時間スケールでのPcdh発現変動を見出している。一方、胎児期および幼児期マウスにおいてはPcdh発現変動が少ないことが示唆された。これらの結果より、Pcdh発現変動は成体期において何らかの生理的役割を担っていることが推測された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下3項目を進めることで、仮説「Pcdh発現の変動が個性を変える」を検証する。 a)Pcdh発現変動の測定:今年度までに完成した計4種類のPcdh発現可視化マウス(β3-RFPマウス、β19-RFPマウス、γA3-GFPマウスおよびβ15-GFP-CreERマウス)を用いて、これら4種Pcdhの発現変動を定量化する。また、β15-GFP-CreERマウスを用いることで、これまでは測定できなかった脳深部や月~年レベルでのPcdh発現変動の測定が可能になると予想されるため、この点についても検討する。さらに、Pcdh-α2の発現可視化マウスを完成させる。 b)Pcdh発現の変動メカニズム解析:Pcdh発現制御に関わることが予想されるDNAメチル化部位の機能を調べる。具体的には、本部位のゲノムDNA配列を改変した遺伝子改変マウス(作成済)におけるPcdh発現を調べる。すなわち、本マウス脳におけるPcdh-β3発現細胞の空間的配置や量をPcdh-β3発現可視化マウスを用いて調べると共に、Pcdhや他遺伝子の発現を網羅的に調べる。また、クロマチン免疫沈降法を用いて、Pcdhの発現制御に関わるヒストン修飾を同定する。同定できた部位の機能解析を行うため、本部位を欠損させた遺伝子改変マウスを作製する。 c)Pcdh発現変動と個性変化との因果関係解析:Pcdhは神経回路の形成や再編に関わると考えられている。また私たちは成体期においてPcdh発現変動を認めている。そこで、成体期における神経回路の形成・再編が詳細に調べられている恐怖条件付け学習課題をモデルとして、Pcdh発現変動の個性変化へ及ぼす影響を解析する。
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Research Products
(8 results)