2019 Fiscal Year Annual Research Report
進化と行動の数理モデルに基づく「個性」の適応的機能の検討
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
19H04902
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パーソナリティ / 個性 / 統計モデリング / 進化 / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやそのほかの動物の行動に「個性」がなぜ存在するか,ということは基本的でありながら決着のついていない問題である。本研究では,データのモデリングや計算機シミュレーションを通して,個性の適応的な機能を理論的に検討することでその問題を検討する。 初年度は,パーソナリティに関する質問紙の回答データ等のオープンデータから,その分布について統計的構造を詳細に分析することでその生成プロセスや機能について検討することを試みた。具体的にはまず,従来の分析において類型 (タイプ) が存在すると主張されていたパーソナリティに関する16万人程度の回答からなるデータに対して,従来の分析手法の性質を理論的に検討し,その問題点を明らかにした。また,その問題を解決するための分析方法を提案し,それによりデータを再分析し,パーソナリティを構成すると考えられている5つの因子の間には複雑な交互作用が存在すること,そしてそれにより強い非一様性が存在することを明らかにした。また,同様の分析を日本人を対象とした調査データにも適用し,その分布の文化差についても検討した。 本研究の成果は,パーソナリティという基本的な個性の機能やその形成されるプロセスについて示唆を与えるものである。この結果を再現する数理モデルを構築し,個性の形成過程を探っていくこと,またこの分析手法を精緻化し,ヒト以外の動物も含めて個性の分布についての一般的な知見を得ることが次年度の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた進化モデルによる個性の適応的機能の検討までは至らなかったが,その基盤となる個性の分布の統計的構造に関する検討で十分な成果が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,本年度で得られた「個性」の分布における統計的構造についてより精緻化・一般化しながら,その知見を進化モデルとも組み合わせ,計算機シミュレーションを実施することで「個性」の適応的機能を探っていく。
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