2019 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲脳活動データの時空間解析によるヒト脳「個性」指標の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative research toward elucidation of generative brain systems for individuality |
Project/Area Number |
19H04924
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時空間解析 / 脳波 / 機能的MRI / 個性指標 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
応募者のグループが開発した脳情報解析のための機械学習法を高度化し、脳波MicrostateとfMRI脳機能結合の解析技術を発展させ、脳イメージングデータに基づくヒト脳「個性」指標を新たに創出することを目指し、本年度は、以下の2つの課題に取り組んだ。第一に、脳波データに基づくヒト脳「個性」指標について検討するため、安定した脳波空間パターン・ダイナミクスとして注目されているMicrostateを改良する、共活性成分分析(Hirayma et al., 2015)に基づく新しい脳波ダイナミクス解析フレームワークを開発した。Microstate解析は、脳波のチャンネル空間パターンをクラスタリングする単純な解析法で、クラスタ数の決め方の恣意性や、その脳内機序がわかっていたいという問題点があった。これに対して、提案手法では、脳波に空間フィルタを適用することで、脳活動と対応する信号成分空間へと変換し、そこでパターン分類を行う。さらに、各時刻のパターンが、脳内情報処理要素に対応する共通基底の重ね合わせで表現されているという仮定を加えた階層型モデルであり、Microstateのいくつかの課題の解決が期待される。提案手法のMatlabツールを構築し、PREDiCTという公開脳波データに適用したところ、本手法の有望性を示唆する共通基底と共活性クラスタが得られた。第二に、Ricardo Monti氏(UCL)が日本に滞在した際に、彼が開発したModular Hierarchical Analysisに基づく、fMRI脳機能結合からの年齢推定法について共同研究を行った。ATRが幅広い年齢層から集めた安静時fMRIデータベースを含めた複数のデータベースに対して、提案法により年齢推定が可能であることが示された(論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共活性成分分析を行うMatlabツールを構築し、PREDiCTという公開脳波データによる検証を行い、本手法の有用性と課題がかなり把握できた。主な課題は、共活性成分分析が空間フィルタをデータから学習するため、脳波のアーチファクトの影響を受けやすく、また、個人差の影響がMicrostateより大きいことである。前者については、複数の前処理法を適用することで軽減されることが示せた。後者については、被験者共通の共活性状態と、個人特有のものに分けて分析するなど、改善策を検討しているところである。解析結果を安定させることで、共活性状態と「個性」との関連がより明確になることが期待される。 脳機能結合からの年齢推定に関しては、すでに改定稿の査読結果を待っている段階で、さらに次の共同研究案について情報交換を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳波データに基づくヒト脳「個性」指標の研究に関しては、本年度見つかった共活性成分分析法の課題に対処するため、アーチファクト除去法の再検討と、共活性状態の詳細な分析を継続し、必要であれば手法の拡張を行う。次年度は、fMRIデータに基づくヒト脳「個性」指標の研究を主に実施する。Ricardo Monti氏との共同研究成果を活かして、Modular Hierarchical AnalysisのModuleの構成法に関して、新しいアイデアを定式化し、データで検証する。また、Takagi et al.(2019)が、多集合正準相関分析に基づいて開発した共通神経モードを解釈しやすいものとするため、当グループが開発したモジュール結合分解と融合し、行動状態に依存しない少数のモジュールを抽出する手法を開発する。低次元のモジュール間結合行列に現れる個人差や課題間の違いの特徴付けを行うとともに 、各モジュールの空間パターンや、モジュール間結合行列の変動パターンの神経科学的解釈を検討し、ヒト脳「個性」指標としての可能性を検討する。
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Research Products
(2 results)