2019 Fiscal Year Annual Research Report
Does a geometrical model uniformly explain various escape direction patterns of animals?
Publicly Offered Research
Project Area | Systems Science of Bio-navigation |
Project/Area Number |
19H04936
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河端 雄毅 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (50606712)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 逃避方向 / 逃避経路 / 被食回避 / 対捕食者行動 / 幾何学モデル / 魚類 / コオロギ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、独自の幾何学モデルを移動様式が大きく異なる複数の捕食者-被食者系に適用することにより、一見すると多様な逃避方向パターンが1つの法則で成り立っているかどうかを検証することである。2019年度は、これまでに取得済みの稚魚(マダイ)、ゴキブリの逃避行動、並びにカサゴの捕食行動に加えて、エビ、カニ、コオロギの逃避行動、並びにカエルの捕食行動の映像を新たに取得した。 エビとカニの逃避行動:日本沿岸に広く生息するイソスジエビ、ベニツケガニ、カニダマシ、アサヒガニを対象種とした。これらは移動様式が異なるため、理想的なモデル種である。捕食魚(カサゴ等)の模型を対象種に接近させ、逃避行動を誘発した。エビとカニそれぞれにおいて、5~10個体から約20回ずつ撮影することで、合計100以上ずつの逃避行動データを得た。 コオロギの逃避行動:研究計画研究班との共同研究により、公表済みのフタホシコオロギの逃避行動データをご提供いただいた。 カエルの捕食行動:コオロギ、ゴキブリ等の昆虫の捕食者であるツチガエルを対象種とした。カエルの飼育容器中央にカップを逆さに置き、その中に餌となるコオロギ1個体を収容した。その後、ゆっくりとカップを取り外し、コオロギをカエルに捕食させた。その様子を高速度カメラで上方から撮影することで、計48の捕食行動データを得た。 以上のデータの予備的な解析の結果、エビ・カニ・ゴキブリ・マダイにおいて一定距離後は巡航速度になるという理論モデルの前提が成り立ち、逃避方向パターンを説明可能であることが分かった。コオロギの運動は極めて複雑であり、この前提が成り立たないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通りの種で逃避行動データを得ることができ、予備的な解析も実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
被食者コオロギ対捕食者カエルに関しては仮想空間上での捕食被食実験を行うことに変更する。その他の種においては予定通りに幾何学モデルに当てはめる。 ・捕食者の捕食行動を実測値からモデル化:カエルは餌に対して舌を伸ばして捕食するため、カサゴと同様に餌の方向に一定の距離を直線的に移動するものとする。カエルの舌の移動速度とカサゴの突進速度を実測値から推定する。 ・エビ・カニ・マダイVSカサゴ、ゴキブリVSカエルのモデル分析:被食者において|α|(正中軸に対する逃避方向の絶対値)と時間(円に到達する時間)の関係を調べる。円の半径は巡航速度に到達するまでのおおよその距離とし、移動距離、速度、加速度の時系列変化から推定する。両者の関係を複数の回帰モデルに当てはめ、最適モデルを選択する。また、円を出た後の巡航速度を推定する。後ろ向きに継続して移動するなど異なる移動様式がある場合は別々に巡航速度を推定する。 続いて、シミュレーションにより有効な逃避方向を推定する。β(捕食者の接近方向)毎にαを変化させ、「被食者が危険領域を抜け出す時間」と「捕食者がその地点に達する時間」を求め、この差が最大・準最大となる方向を算出する。モデルの推定精度を調べるために、実データからのずれを従来の幾何学モデル(捕食者と被食者の速度から推定)と比較する。 ・コオロギVSカエルの仮想空間上での捕食被食実験:計画班との共同研究により提供いただいた気流刺激からのフタホシコオロギの逃避行動をコンピュータ上で再現する。そこに、別に得たツチガエルの捕食行動を重ね合わせ、カエルの舌がコオロギに当たる場合を捕食、当たらない場合を逃避として、解析を行う。先行研究により、事前に音刺激を与えるとコオロギの逃避方向の頻度分布が変化することが確認されているため、その逃避方向の変化が被食回避に有効かどうかを検証する。
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Research Products
(18 results)