2019 Fiscal Year Annual Research Report
動的構造平衡情報に基づく数理解析によるGPCRのシグナル制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
19H04951
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 卓見 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20451859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GPCR / NMR / システム生物学 / アドレナリン受容体 / オピオイド受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
交換モンテカルロ法を利用して二状態~四状態の構造平衡モデルを網羅的に探索にすることで、各種薬剤が結合したb2アドレナリン受容体 (b2AR)の複数の残基 (L215, L284, L287) に由来するNMRシグナルを再現する最適な構造平衡モデルを同定することに成功した (Imai et al. Nat. Chem. Biol. 2020)。さらに、このb2ARの構造平衡を反映しつつ、Gタンパク質シグナルの活性化とアレスチンシグナルの活性化の両方の要素を含むような、GPCRシグナル伝達分子群の濃度の経時変化をシミュレーションする数理モデルを構築した。この数理モデルにおける速度定数や平衡定数を、b2AR発現細胞のcAMP濃度を様々な条件でリアルタイム観測した先行報告のデータを再現するように、交換モンテカルロ法を利用して最適化した。その結果、b2ARのNMRシグナルとb2AR発現細胞におけるcAMP濃度の経時変化の両方の実験データを良く再現することが可能な数理モデルを得ることができた。 また、Gタンパク質改変体であるmini-Gs/iの発現系構築および試料調製を行った上で、部分重水素化とメチオニン選択標識を両方施したmuオピオイド受容体 (MOR) のNMRスペクトルを、調製したG蛋白質改変体が存在する条件において測定した。その結果、細胞内側に位置するメチオニン残基のNMRシグナルの化学シフトや強度が、G蛋白質改変体の添加に伴い顕著に変化した。この結果から、MORとG蛋白質改変体が複合体が形成されたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、(1) b2ARの構造平衡を反映した、G蛋白質シグナルとアレスチンシグナルの両方をシミュレーションできる数理モデルの構築、および(2) Gi蛋白質の試料調製法の確立と MORとの結合の確認を行う予定であった。現在までに、これと対応するように、(1) b2ARの構造平衡を反映しつつ、Gタンパク質の活性化とアレスチンの活性化の両方の要素を含み、NMRシグナルや cAMP濃度の経時変化を再現できる数理モデルの構築、および (2) mini-Gi/sの調製およびmini-Gi/sとの結合に伴うMORのNMRシグナルの変化の確認を達成している。さらに、交換モンテカルロ法により二状態~四状態の構造平衡モデルを網羅的に探索して、最適なb2ARの構造平衡モデルを見出すことに成功して、その成果を投稿論文に発表した (Imai et al. Nat. Chem. Biol. 2020)。したがって、研究は順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
【MORの構造平衡における各活性型の量比の決定】 薬効度が異なる各種薬剤の存在下において、MORとmini-Gs/iの複合体を調製して、NMRスペクトルを取得することで、MORの平衡状態における各活性型の量比を算出する。 【MORの構造平衡を反映した、GPCRシグナルの数理モデルの構築】 b2ARの数理モデルを応用して、MORの構造平衡を反映するようなGPCRシグナルの数理モデルの構築、シミュレーション、先行論文で報告されているシグナル伝達活性の実験値との比較を行う。 【交換モンテカルロ法による、GPCRシグナルの数理モデルの信頼性の評価】 交換モンテカルロ法により、b2ARおよびMORの数理モデルを構成する多数のパラメータを網羅的に検討して、実験結果を再現可能なパラメータの範囲を算出して、数理モデルを評価する。
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