2019 Fiscal Year Annual Research Report
Phase response theory of the circadian clocks and its experimental validation
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
19H04955
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
瓜生 耕一郎 金沢大学, 生命理工学系, 助教 (90726241)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 位相応答 / 哺乳類概日時計 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では数理解析とその実験検証により、外部シグナルに対する概日時計リズム位相応答機構の解明を行い、効率の高いリズム障害治療薬開発へ向けた理論基盤を構築する。
2019年度は、相互作用する二つのネガティブフィードバックループの光シグナルに対する位相応答および同調機構を数理モデルで調べた。哺乳類の概日時計では、時計遺伝子Per1とPer2の発現が光シグナルによって誘導される。すなわち、概日時計の遺伝子制御ネットワークには、二つの光入力点が存在する。PER1タンパク質とPER2タンパク質の分子機能は似ているが、恒暗条件下では、Per1とPer2の発現ピークの間には、約4時間の時間差(位相差)があることが知られている。このことは、この二つの時計遺伝子産物の間に、なんらかの役割の違いを生じさせうると考えられていたが、その詳細は不明であった。数理解析の結果、光シグナルに対する位相応答において、Per1とPer2は異なる機能をもつことを明らかにした。シミュレーションによれば、Per1とPer2のリズム位相差が大きくなればなるほど、位相応答における役割の違いが顕著になる。また、哺乳類概日時計のペースメーカー組織である視交叉上核において、光シグナルによるPer1およびPer2の発現誘導量が、動物によって異なる。この発現量の違いが、生物種間における位相応答曲線の違いを生じさせる可能性を、数理モデルにより示した。そして、概日時計が光サイクルに同調するためには、概日時計の固有周期に応じてPer1とPer2の発現レベルに相対的な違いがあることが重要であることを見出した。これらの結果は、仮にPer1もしくはPer2のどちらかを選択的に転写誘導できれば、時間帯によらず決まった位相応答を誘引できる可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は主要テーマの一つである、概日時計遺伝子制御ネットワークに存在する複数の光シグナル入力点(=光応答時計遺伝子)の機能解析において大きな進展があった。現在、位相応答におけるPer1とPer2の機能の違いについて、論文としてまとめているところである。このPer1とPer2の機能の違いは、哺乳類の光サイクルに対する同調とリズム障害治療薬開発において重要な因子になると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られた結果をさらに発展させる。それと平行して、当初の計画に沿って研究を進めていく。
(1) 光シグナルによる視交叉上核位相パターン形成機構: 2019年度の解析から、Per1とPer2は光シグナルに対する位相応答において異なる役割を持つことがわかった。マウスを長日条件下において飼育すると、視交叉上核で位相パターンが形成されることが知られている。また光サイクルの周期が、24時間から数時間異なる場合でも視交叉上核で位相パターンが形成される。この位相パターン形成と、Per1とPer2の機能の違いの間にどのような関連性があるかを、数値シミュレーションで調べる。
(2) 細胞分裂に対する位相応答の解析: 細胞分裂に対する、細胞内時計の位相応答を解析する。この問題は、脊椎動物の体節形成のタイミングを制御する分節時計などの発生時計において重要になる。また培養細胞を用いた実験により、概日時計においても細胞分裂が振動位相を変化させることが報告されている。そこで細胞分裂が遺伝子発現リズムの位相をどのように変化させ、またどのタイミングで分裂すれば、位相シフトを最小化できるかを数理モデルから明らかにする。
|
Research Products
(2 results)