2019 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the molecular mechanisms of membrane blebbing by combining experiments and mathematical simulation
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
19H04968
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブレブ / 細胞膜 / アクチン細胞骨格 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでブレブの分子メカニズムの解明を行ってきた。ブレブは細胞膜がアクチン細胞骨格から脱離することによって細胞内圧によって細胞膜が拡大し形成される。しかし一定の大きさに拡大すると、細胞膜にアクチン細胞骨格が再集積することによって退縮に転じる。申請者はこのような拡大と退縮を周期的に繰り返す細胞膜構造に興味を持ち、ブレブの形成に関わる分子の同定と数理モデルの構築に取り組んできた。特定の遺伝子の発現が周期的に変動する機構などは多くの研究が為されているのに対して、細胞膜構造のような多数の分子の集合・離散が周期的に変動するブレブの形成メカニズムは殆ど研究がなされていない。本研究提案では、ブレブの分子機構に関わる新規分子の同定及び機能解析を進めるとともに、細胞膜の形成退縮のメカニズムを説明する数理モデルの構築を目指している。これまでの研究において、ブレブの形成・退縮を数理モデル化することによって、アポトーシスや細胞運動の際のブレブの形態の違いを理解することができた。この成果はMolecular Biology of the Cell誌に受理された。また、申請者の確立したブレブによる細胞運動の実験系は簡便であるため、ブレブの形成を抑制する薬剤スクリーニングを実施することが容易である。これまでに、予備的に化合物ライブラリーを用いてブレブの形成を抑制する化合物の探索を行った結果、EGFR 阻害剤やIP3受容体阻害剤がブレブの形成を顕著に障害することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目標の一つである、ブレブの数理モデル化及びその実験的検証の部分に関しては論文発表を行った。さらに、ブレブの形成・退縮に、細胞質の流動性の制御が寄与するという新しい知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度の数理モデル化の過程で新たに見出したブレブの制御に関わる新たな分子機構の解明を進めるとともに、方向性を持って運動する細胞におけるブレブの分子機構やブレブの制御に関わるシグナル伝達機構の探索を行う。生体内において、細胞は方向性を持ってブレブを形成し運動する。例えばゼブラフィッシュの始原生殖細胞がケモカインの一つ、stromal cell-derived factor 1(SDF-1)の濃度勾配に応答してブレブを形成しながら方向性をもって運動する様子が観察されている( Blaser et al. Dev Cell 2006)。ヒトにおいても、SDF-1 は骨や肝臓などに高発現しており、がん細胞に対する走化性因子として機能し、これらの臓器への転移に関与する。今年度は、ヒト大腸がん由来のDLD1細胞の細胞遊走の実験系を用いて、方向性をもって細胞が運動する際に、ブレブを遊走方向に形成するメカニズムに関わるシグナル経路の同定を試みる。これまでの研究により同定したブレブの形成制御に関わる分子群の動態に着目することによって、細胞遊走時のブレブ形成が、どのシグナル伝達経路のステップを調節することで達成されているかについて明らかにしたい。
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Research Products
(5 results)