2019 Fiscal Year Annual Research Report
感覚予測と報酬予測を統合するメタ学習機構:計算論的理解と脳内基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Correspondence and Fusion of Artificial Intelligence and Brain Science |
Project/Area Number |
19H04977
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井澤 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20582349)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動学習 / メタ学習 / 計算論的神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の人工知能研究では、新しい環境やタスクに直面しても素早い学習を可能にするための「メタ学習(学習のための学習)」の開発が注目を集めている。これら論文の序論では、ヒトの持つ高いメタ学習能力を模倣することによって人工知能のメタ学習を実現する研究戦略が記されているが、実際にはメタ学習の脳内基盤は十分には明らかになっていない。特に、運動学習においては、環境の統計的性質や情動が学習スピードを向上させる現象が報告されている。しかし、これら現象を統一的に説明する運動学習における「メタ学習」の計算原理と脳内基盤は全く明らかになっていない。 本研究の目的はヒトが環境やタスクに応じて適応的に学習パラメータ(学習スピードや探索ノイズ)を調整する脳内メカニズムを、人工知能分野で開発が進んでいるメタ学習機構との対照を通じて、数理モデルの構築、行動実験、脳機能イメージングから多角的に解明することを目的とする。本研究では、記憶の更新量に応じて報酬を制御する新しい運動メタ学習実験パラダイムを開発し、行動データと脳機能イメージングデータの解析や計算論的モデルとの比較を通じて、脳における運動メタ学習機構の統一的な理解を行う。これまでの研究で、運動メタ学習に関する規範モデルを作成し、計算機実験によってその妥当性を検討した。また、これまでに提案された計算論モデルと合わせて、行動データと比較することにより、提案モデルが他のモデルよりも優れていることを明らかにした。また、報酬駆動型の運動学習中の脳機能イメージングデータを用いて、モデルからメタ学習パラメータを推定し、そのパラメータと相関のある脳部位を特定した。 さらに、動物の行動データ取得を可能とするハプティックデバイスの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計算論的モデルの導出では、機械学習の理論と整合性のあるモデルを導くことができ、運動学習に対する知見を大きく変える可能性のある提案が出来た。また、1年で50名以上の参加者から行動データを取得することが出来た。計算論的モデルを確率的生成モデルに適用し、ベイズ推定によってパラメータを推定し、グループ間のパラメータの差を検討することにより、モデルの評価を行うことが出来た。また、動物実験用の機器開発も順調に進んだ。さらに、ヒトを対象とした脳刺激実験の装置も作成することが出来た。当初の計画以上の進展を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討したモデルの実証を行うために、更に行動データの取得を行う。また、これら検討に基づいて、論文を執筆し、成果の浸透を計画する。 さらに、今後の研究の展開のために、モデル動物の実験方法の開発を進める。
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Research Products
(1 results)