2019 Fiscal Year Annual Research Report
粘り強さを制御する神経メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
19H05005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小澤 貴明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90625352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドーパミン / 蛍光イメージング / 粘り強さ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々がストレス社会を健康的に生き抜き,自己実現を達成していくには,期待された結果が得られなくとも行動を持続していく「粘り強さ」が必須である。動機づけのメカニズムについて,これまで薬理学的手法により脳内ドーパミン関連メカニズムが重要であることが示されてきた。しかし,実際のドーパミン放出動態については未だに不明な点が多く,動物が「粘り強く報酬獲得行動を持続している時」と「諦めた時」に脳内のドーパミンレベルが「いつ」「どこ」「どのように」変化しているのかについては,詳細に検討されて来なかった。本研究では,まず頭部固定下の動物において,エサ報酬チューブに対する舐め行動(リッキング)を指標としたオペラント課題を確立し,次に,この課題において報酬獲得のために必要なリッキングの回数,すなわち作業コストを上昇させるパラダムについて検討した。その結果,動物は訓練を通して特定の音手がかりが提示された際にリッキングを示し,エサ報酬を獲得することを学習できる,ということが明らかになった。また,報酬獲得に必要な作業コストをある程度上昇させても動物は粘り強くリッキングを持続させることもわかった。一方で,作業コストをさらに高く設定した場合,多くの動物は報酬獲得を諦めた。次に,薬理学的手法により,脳内ドーパミン系の役割について検討したところ,高コスト状況では脳内ドーパミン系がより積極的に報酬獲得行動に関与していることが明らかになった。また,ドーパミン放出動態の観察に必要なイメージング技術のセットアップを行い,行動中の動物において蛍光ドーパミンセンサーを用いた脳内ドーパミン変化の計測が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中核となる行動課題について,多くの有益な基礎データが収集できた。また,薬理学的方法により,本研究の仮定している,粘り強さにおける脳内ドーパミン系の積極的な関与を裏付けるような結果が得られた。さらに,イメージング技術を用いた神経活動測定法を確立し,イメージング実験に必要な蛍光センサーについてもその実用性を確認することができた。以上の理由により,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
報酬獲得のために必要な作業コストの変化によって動物の「持続的な報酬獲得行動」と「諦め」がどのように変化するのか,引き続き解析を行っていく。また,蛍光ドーパミンセンサーを用いたイメージングを行うことによって,課題遂行中の動物の脳内におけるドーパミン放出動態についての解析を進める。さらに,光遺伝学を用いた神経活動操作技術を用いて,脳内ドーパミン放出と動物における粘り強さの因果関係についても検討する。
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Research Products
(6 results)