2019 Fiscal Year Annual Research Report
困難を乗り越える意志力を駆動する神経基盤の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
19H05019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 正晃 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (00716186)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 意志力 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツや勉学などにおいて、ヒトは、将来の目標を高く設定し、現実との間に生まれる差を「乗り越えよう」と努力し、その姿勢をむしろ評価する傾向にすらある。この機能が不足すると、挫折を味わった後のひきこもりや抑うつなどの問題につながるかもしれない。しかし、このような「困難を乗り越える意志力」を担う神経メカニズムは解明されていない。本研究は、「困難を乗り越える」動物行動モデルを開発し、最先端の神経活動計測法や操作法を用いて、その神経メカニズムを解明することを目的とする。 今年度は、頭部固定下のラットが、匂い刺激提示後に自ら行動して確率的報酬を得る課題を用い、報酬の期待外れを乗り越える意志力が強く誘導されることを見出した。さらに意志力を駆動するために中心的役割を果たすと予想される中脳ドーパミン細胞の電気活動を計測した。すると、報酬の期待外れを乗り越える意志を駆動すると解釈できる活動を示すドーパミン細胞を見出した。また、中脳ドーパミン細胞から線条体への神経回路の活動を計測するフォトメトリー法を確立し、その方法を用いて、期待外れを乗り越える行動を制御すると解釈できる神経回路を見出した。本成果は、動物モデルのみならずヒトを対象とする当新学術領域における、ドーパミン細胞が深く関わる動機づけや社会性などの正常機能、うつ、ひきこもりなどの異常、を対象とする他の研究と連携し、意志力の神経基盤解明の推進や、新たな研究の創造に貢献することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった期待外れを乗り越える意志力の駆動や制御に重要である神経活動やその神経回路基盤を明らかにできているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、期待外れを乗り越える意志力の駆動や制御に関わる神経活動とその神経回路基盤の詳細を明らかにする。また、光遺伝学法を用いてその因果的役割の解明を目指す。
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