2019 Fiscal Year Annual Research Report
意志力を生み出す脂質分子と現代の食環境による破綻
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Promotion of the Will-Dynamics |
Project/Area Number |
19H05023
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
酒寄 信幸 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30747457)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / 飲水行動 / モチベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高n-6/低n-3飼料を妊娠中のみ、または授乳中のみ投与する実験を行い、子におけるスクロース水の摂取量を解析した。すると、母親が妊娠中に高n-6/低n-3飼料を投与された子マウスにおいてのみ、スクロース水の摂取量が増加することを見出した。これにより、脳形成期における適切な脂肪酸摂取の重要性が裏付けられた。 次に、胎生14.5日胚の中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロンを組織学的に解析した。高n-6/低n-3飼料投与群において、ドパミン作動性ニューロンの数が増加していることが分かった。以上から、胎子期におけるドパミン作動性ニューロンの過剰産生が、将来のスクロース水の摂取量を増加させる原因となった可能性が示された。 飼料による介入では全身に影響が及ぶため、中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロン数の増加とスクロース水の摂取量の増加における因果関係は不明瞭である。ここでは、ウイルスベクターを用いた神経回路選択的除去技術により、高n-6/低n-3飼料投与群において中脳腹側被蓋野から側坐核に投射する過剰なドパミン作動性ニューロンを選択的に除去し、スクロース水の摂取量の増加を抑制できるかを検証した。まず、所属研究室が開発した逆行性遺伝子導入ウイルスベクターFuG-Eを用い、EGFP発現レンチウイルスベクターを側坐核に注入し、中脳腹側被蓋野におけるドパミン作動性ニューロンへの感染効率を調べたところ、ドパミン作動性ニューロンにおいてEGFPの発現は確認されなかった。側坐核に投射する海馬におけるニューロンではEGFPの発現が確認されたため、レンチウイルスベクターFuG-Eはマウスにおけるドパミン作動性ニューロンに感染させることができないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、高n-6/低n-3飼料を投与する時期を限定する実験、およびドパミン作動性ニューロンの発生解析を実施することができた。また、ウイルスベクターを用いたドパミン作動性ニューロンの除去実験にも着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、逆行性遺伝子導入アデノ随伴ウイルスベクターを用いてドパミン作動性ニューロンへの感染効率を検証し、神経回路選択的除去実験を実施する。また、当初の計画通り、中脳におけるメタボロミクス解析を行い、ドパミン作動性ニューロンに作用する脂質分子を同定する。
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