2019 Fiscal Year Annual Research Report
西アジア及び周辺都市に尽力したフランスの都市計画家ユルバニストに関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | The Essence of Urban Civilization: An Interdisciplinary Study of the Origin and Transformation of Ancient West Asian Cities |
Project/Area Number |
19H05038
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三田村 哲哉 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70381457)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ユルバニスム / ミュゼ・ソシアル / フランス / トルコ / リヨテ / アフリカ / 建築家 / 都市計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は次の3点である。第1は、入植地の建築・都市の担い手が覇権構想やユルバニスム、植民地政策の影響を受けて18、19世紀の陸軍や技師から20世紀の建築家に交代した背景とそれらの枠組みを把握するために、19世紀のアフリカの仏領に点在する諸都市と、モロッコ初代総督となる前にユベール・リヨテによるアンカソベの都市計画に関する考察、および1931年パリ植民地国際博覧会の会期中に開催された国際植民地・熱帯諸国都市計画会議の概要に関する分析を進め、仏領におけるユルバニスムと称されるようになる新たな都市計画がアフリカからトルコに向って徐々に実施されていった様子を明らかにした。第2は国立建築・遺産博物館、国立美術史研究所、国立文書館、ミュゼ・ソシアルに保管されている図書、雑誌、文書、データベースを用いて、ミュゼ・ソシアルの都市・農村衛生部会で活躍した建築家・都市計画家らの履歴・作品歴の作成に当たった点である。本年度は、西アジアおよび周辺都市で活躍した建築家・都市計画家のものを優先的に作成した。設計競技には、ドイツの建築家・都市計画家が参加した国もあるが、履歴・作品歴の対象外である。第3は、アンカラの新首都設計競技に参画した唯一の建築家・都市計画家レオン・ジョスリーが手がけた都市計画で、同博物館、同研究所、国立労働文書館ほかに保管された資料とアンカラの実地調査に基づき、ジョスリーが手がけた都市計画案を追いながら、関心の対象や視点の変化、設計手法の変遷、ユルバニスムの発展に果たした役割を明らかにすること試みた。このほかに、2年度間の研究対象に挙げているアガシュに関する考察は、履歴と作品歴の作成と、イギリスの影響を受けて社会学に傾倒するようになる学生時代の放浪歴と社会思想への傾倒に関する考察を進めた点が挙げられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施計画は、①入植地の建築・都市の担い手が18,19世紀の陸軍や技師から20世紀の建築家に交代した背景とそれらの枠組みに関する考察、②西アジア及び周辺都市で活躍した都市計画家アガシュらの履歴・作品歴の作成、③西アジア都市と西アジア以外の都市における都市計画の比較考察で、特に注目すべき建築家・都市計画家はアガシュとジョスリーである。本年度の研究実績は第1に19世紀のアフリカの仏領に点在する諸都市と、モロッコ初代総督となる前にユベール・リヨテによるアンカソベの都市計画に関する考察、および1931年パリ植民地国際博覧会の会期中に開催された国際植民地・熱帯諸国都市計画会議の概要に関する分析、第2にミュゼ・ソシアルの都市・農村衛生部会で活躍した建築家・都市計画家らの履歴・作品歴の作成、第3にアンカラの新首都設計競技に参画した唯一の建築家・都市計画家レオン・ジョスリーによる国内外の都市計画案に関する考察が挙げられる。アガシュに関する考察については一部に着手したにすぎない。このほかに西アジア都市に着目したことにより、東方趣味の建築に関心を示した建築家アレクサンドル・マルセルが、エジプトで実績を上げた後、最初の在日本国フランス大使館の計画案を手がけており、その一連の計画案に関する考察を進めることにも成功した。新たな研究の視点から生まれた研究の成果である。現在までの研究状況は建築家・都市計画家の履歴・作品暦が未完であることに加えて、ドイツの建築家・都市計画家およびアガシュに関する考察が途中段階にあるなどの一部に不足が見られるものの、初年度の研究対象に関しては大方着手あるいは考察が完了しており、当初の研究実施計画の通りに進んでいると捉えられる状況にある。西アジア都市に着目し、エジプトに焦点を当てる機を得たことも大きな成果と言え、概ね順調に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、現在までの進捗状況の通り、①入植地の建築・都市の担い手が18、19世紀の陸軍や技師から20世紀の建築家に交代した背景とそれらの枠組みに関する考察はほぼ完了し、②西アジア及び周辺都市で活躍した都市計画家アガシュらの履歴・作品歴の作成はおおむね順調に完成に近づきつつある。③西アジア都市と西アジア以外の都市における都市計画の比較考察は最終年度の主要な課題であり、特に注目すべき建築家・都市計画家アガシュとジョスリーのうち、後者に関する考察は大方完了している。以上の通り、現在までの進捗状況を踏まえた上で、今後の研究の推進方策を記すと、次の通りである。本年度はまずはじめに、初年度に着手したばかりのアガシュに注力し、ジョスリーに関する考察と同様に、都市計画に注視した分析を進める。自らの設計事務所で手がけた代表作であるキャンベラ(1911)やダンケルク(1912-23)、リオデジャネイロ(1927-38)における都市計画案の策定ばかりでなく、学生時代の世界放浪歴やその旅行の間の見聞歴、ミュゼ・ソシアルの都市・農村衛星部会において社会学に傾倒した思想面、さらには語学に長けた才能を生かして国内ばかりでなく国外にまでフランスの新しい都市計画、ユルバニスムの広報活動を展開するという役割を果たした功績にも注目する必要がある。このようにアガシュを中心に、履歴と作品歴を完成させるとともに、ドイツの建築家・都市計画家ヘルマン・ヤンセンらがイスタンブールやアンカラで手がけた都市計画案に関する考察も踏まえた上で、③西アジア都市と西アジア以外の都市における都市計画の比較考察を仕上げる予定である。都市・農村衛生部会に所属する建築家・都市計画家の中には、当初の研究計画に記したように、協働による実践教育で育成した数多くの弟子たちもおり、考察の対象を広げて研究の深化を図る予定である。
|
Research Products
(1 results)